映画「アルマゲドン」が現実に 小惑星に宇宙機が体当たり、地球を救う実験の打ち上げ迫る

ただし、人類の存亡を揺るがすようなサイズの小惑星に関しては、望遠鏡や各種機器の発達によって次々に新たなものが発見され、常時追跡観測されている。下の動画は1999年から2018年にかけて、太陽系、とくに地球に近い軌道を公転している小惑星が、いかに数多く発見されたかを表している。

【1999~2018年にかけて新規で発見された太陽系内の小惑星】

二重小惑星にDARTを衝突させて軌道を偏向

今回、NASAがターゲットにする天体は、小惑星「ディディモス」と「ディモルフォス」からなる二重小惑星である。二重小惑星とは、2つの小惑星がお互いに引き合いながら共通の重心を中心に周りつつ、さらに太陽などの恒星の周りを公転している天体のこと。今回の場合、直径780mのディディモスが母小惑星であり、直径160mのディモルフォスがその月となる。

小惑星「ディディモス」と「ディモルフォス」の大きさ比較(NASA)

ちなみに、母小惑星であるディディモスの直径780mとは、駒沢オリンピック公園(東京都世田谷区)の全敷地、または富士山の火口ほどの大きさだ。月にあたるディモルフォスの直径160mとは、日本生命丸の内ビル(159m)や三ノ宮駅ビル(160m)、もしくはクフ王のピラミッドの高さと同等だ。

NASAはこの二重小惑星に向けて「DART」を、今月24日(水)の15時20分(日本時間)、米カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から、スペースX社のファルコン9ロケットによって打ち上げる。その名称は”Double Asteroid Redirection Test”の略称であり、直訳すれば「二重小惑星の偏向テスト」となる。

太陽光パネルを展開したDART。ヒドラジンとキセノン・イオンによる2種の推進システムを搭載。その他、12台の小型スラスターエンジンも備える(NASA)

DARTの本体寸法は1.2×1.3×1.3m。ロール式の太陽光パネルを展開すれば、さらに左右へそれぞれ8.5m拡張する。打ち上げ時の総質量は610kgだが、ターゲットの到達までの約10カ月の間に、推進剤であるヒドラジンやキセノンなどを消費するので、小惑星に衝突するときの質量は550kg程度になる。


ふたつの小惑星の軌道と、DARTの衝突コース(NASA)

つまり、DARTは決して大きな宇宙機ではない。しかも爆薬などは搭載していない。この小さなDARTを時速2万4,000km(秒速6km)という速度で、直径160mの月にあたるディモルフォスへ衝突させることにより、その軌道をほんのわずかに偏向させるだけである。

その結果、1.2kmの距離を保ちながら互いに引き合って公転する母小惑星ディディモスの軌道もズレるはずだ。このふたつの小惑星が地球との衝突コースにあると仮定すれば、DARTによるこのインパクトによって両小惑星は衝突軌道からわずかに逸脱し、地球滅亡の危機を回避できる。これはそうした事態に備えた実証実験なのだ。

かつて多くの映画が小惑星や隕石の地球衝突を描いてきた。映画「アルマゲドン」では、米テキサス州に匹敵するほどの小惑星が時速3万5,000kmのスピードで地球に接近する。その地球衝突を回避するため、主演のブルース・ウィルスたちがスペースシャトルで小惑星に赴き、その地下深くで核爆発を起こして軌道を変えようと奮闘する、という筋書きだ。

このストーリーと比べれば、DARTはよりクールであり現実的である。巨大な小惑星を完全破壊する必要はない。宇宙空間においては必要最小限の力を加えれば、その軌道は偏向するのだ。

筆者作成

衝突を撮影する子機を分離

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