ワクチン接種者限定ツアー 旅行業界の救世主なるか

    新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染者が確認されたものの、国内のコロナ感染者数は減少し、大打撃を受けた旅行業界にも需要回復の兆しが見え始めている。その中で、ワクチン接種者限定のツアー商品や割引サービスが相次いで登場している。国も接種証明書や陰性証明書を活用して行動制限を緩和する実証実験をスタート。政府が再開を検討する観光支援事業「Go To トラベル」への期待も高まる。一方、業界からは未接種者の排除につながることを懸念する声も上がる。感染対策と需要喚起の両立の模索が続いている。

    まずは様子見

    11月上旬の平日、大阪市北区のJR大阪駅構内にある日本旅行「TiS大阪支店」前には開店前から10人を超える客が並んでいた。「このツアーは参加者が多いですか」「おすすめの旅行先はありますか」。開店するとカウンターはあっという間にいっぱいになり、旅行の相談が始まった。

    同社によると、11月実施の旅行商品の売れ行きは、10月以降に予約がぐんと伸び、緊急事態宣言解除前の9月の予約状況に比べて約4倍となった。ただ、人気はマイカーやレンタカーなどを利用して近場を観光する商品に集中し、担当者は「まだ、様子見をされているお客さまも多い、という印象を受ける」と話す。

    JTBでも9月と比べて売れ行きは2倍になっているものの、「(Go To トラベルが実施された)昨年やコロナ前と比べるとまだまだ少ない」(担当者)と明かす。同社が10月に実施したアンケートで、「ワクチン接種が完了次第、積極的に会食や外出、旅行をしたい」と答えた人は6・2%にとどまった。

    そうした中、政府はワクチン接種や陰性が証明された人の行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験を飲食店やイベント会場で開始。観光庁も旅行会社11社のツアー40本を対象にして、県境を越えた移動制限を緩和するための実験を始めた。「Go To」再開に向け、成果が注目されている。

    旅に「安心」求めて

    実証実験にも参加する日本旅行の担当者によると、昨年から、旅行プランを選ぶ際に「安心」や「安全」を条件にする人が増えたといい、「旅行者を増やすには『接種者限定』のような安全対策をとったプランを用意しないといけない」とその必要性を説く。


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)