総費用1兆1000億円 ケタ外れの最新鋭宇宙望遠鏡、25年越しの打ち上げ迫る

サン・シールドを手作業でセットするノースロップ社の作業員(NASA / Northrop Grumman)
サン・シールドを手作業でセットするノースロップ社の作業員(NASA / Northrop Grumman)

ただし、この1兆円を超えた予算には、5年間の運用費用しか含まれていない。JWSTの予定ミッション期間は10年にもかかわらず、だ。

また、この莫大な費用をサポートしているのが欧州とカナダである。ESAは主にアリアン5による打ち上げフェーズを担うことで7億ユーロ(約900億円)を拠出。また、CSA(カナダ宇宙庁)も2億カナダドル(約180億円)を供与している。

軌道上に打ち上げる宇宙望遠鏡に限らず、単体の宇宙機にこれほど巨額な予算が投じられたことはかつてない。

宇宙に生まれた「最初の星」を観測

金でコーティングされたベリリウム反射鏡の単体。これが18枚組み合わさり1枚の主鏡を形成する(NASA/Goddard/ Drew Noel)

これだけ巨額な予算を掛けて、人類はなにを見ようとしているのか? にわかには信じられない話だが、宇宙空間に最初に生まれた星「ファースト・スター」が、その観測ターゲットである。

ファースト・スターとは、ビッグバンの発生後、最初に宇宙空間に光を放った星や銀河のこと。たとえば私たちが1億光年離れた星を観測したとすると、その光は1億年前に発せられたものであり、1億年の間ずっと宇宙を飛び続け、やっと地球に届いたときに我々が見たことになる。言い換えれば我々は、その星の1億年前の、過去の姿を観たわけだ。

では我たちは、どこまで遠く、どれだけ古い光を見ることができるだろう?

これまでの研究によってビッグバンは138億年前に発生したことが分かっている。ただし、ビッグバン直後の宇宙はとても熱く、電子と原子核がバラバラの状態で飛び回っていたため光が直進できない。その宇宙の温度が摂氏3,000度まで冷えたとき、やっと電子と原子核が結合して分子となり、光が直進できる環境が生まれた。これを「宇宙の晴れ上がり」といい、ビッグバンから約38万年後のことだ。しかし、このときもまだ宇宙に星はなく、暗黒な空間でしかなかった。

やがて分子は宇宙のチリやガスとなって集積しはじめる。そしてビッグバンから1億年から2億5000万年が経過したころ、やっと「ファースト・スター」が誕生する。その星が放った光は約136億年飛び続け、現在の地球にやっと届いている。

つまりJWSTは、地球から136億光年離れた場所で、136億年前に発せられた、宇宙最古の光を捕捉するためのタイムマシーンでもあるのだ。

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