総費用1兆1000億円 ケタ外れの最新鋭宇宙望遠鏡、25年越しの打ち上げ迫る

550km先のサッカーボールを識別

地球から打ち上げられたJWSTがラグランジュ点L2へ向かう軌道図。その航行中に約2週間かけて機体各部を展開していくタイムラインが描かれている(NASA)
地球から打ち上げられたJWSTがラグランジュ点L2へ向かう軌道図。その航行中に約2週間かけて機体各部を展開していくタイムラインが描かれている(NASA)

ファースト・スターを捕捉するために開発されたJWSTの観測器は、史上最高のスペックを持っている。

反射鏡主鏡の口径は6.5mであり、それはハッブルの2.7倍、面積比では約6倍もある。つまりそれだけ集光能力が高いことを意味している。その解像度はすさまじく、40km先にある1セント硬貨(直径19.05mm)、または550km先のサッカーボールを識別することができるほどだ。

ハッブルは地球を周回する軌道上にあり、その高度は540km。一方、JWSTは地球周回軌道ではなく、ラグランジュ点(L2)という特殊な軌道へ投入される。地球から太陽の反対側へ150万km離れた空間を、地球に寄り添うように伴走しながら太陽の周りを公転するのだ。

こうした軌道へ投入するには、より大きなロケット・パワーが必要になるが、ではなぜこの軌道が選択されたかというと、JWSTが赤外線望遠鏡だからだ。

赤外線で天体を観測する場合、赤外線を発生する太陽や地球の熱が弊害となる。そのためJWSTは、太陽や地球から遠く離れた領域を航行することでその影響を最低限に抑え、さらに5層構造のサン・シールドによって太陽光から身を守る。また、機体自体が発する熱も除去するため、搭載されたクーラーで望遠鏡を絶対零度近くまで冷却し続けるのだ。

こうして生み出された暗くて静かな宇宙空間を漂いながらJWSTは、136億年前に発せられた微かな光を、10年間にわたってじっと探し続けるのである。

機体スペック、観測能力、そして予算。すべてに関して過去最高の数字を示すこの宇宙望遠鏡は、人類史上もっとも重要な観測成果をきっともたらすに違いない。

(2021年12月22日12:35更新)

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

今、あなたにオススメ

izaスペシャル

  1. 朝ドラ「虎に翼」第6週(5月6日~)あらすじ 寅子(伊藤沙莉)らが高等試験に挑むも結果は全員不合格…翌年の再挑戦で日本初の女性弁護士誕生

  2. 《難読漢字クイズ》「手斧」の読み方は?「ておの」ではありません ヒントは「ち○○○」!検索しないで当てられる?

  3. 【実録・人間劇場】新宿・歌舞伎町編(3) 女3人に男10人が群がる衝撃の光景 クローズドのハプニングバー

  4. 朝ドラ「虎に翼」寅子(伊藤沙莉)が優三(仲野太賀)を「家族」と表現し表情を変える花岡(岩田剛典)…SNS「ジェラシー」「好きが溢れすぎ」

  5. 朝ドラ「虎に翼」第6週で寅子(伊藤沙莉)たちは離ればなれ!? 梅子(平岩紙)「ずっと思い出を作っていくと思っていた」に不安の声続々

今、あなたにオススメ