「ミニスカの女性キャラが交通啓発」フェミニストとVチューバーの議論がすれ違う理由

    2.5次元的存在の登場でコンテキスト共有はより重要に

    フェミニスト議連は今回の件について「抗議文は公的機関の認識を問うたもので、動画の削除を行ったのも千葉県警だ」とするコメントを発表。抗議をする対象はあくまで動画の削除を決めた千葉県警であり、議連が警察に動画を削除するよう圧力をかけたつもりもないとするスタンスを取っている。

    だが、フェミニスト議連の代表2人のうち1人は地元松戸市の市議である。現職議員を含む団体が「市議会議員」という立場を使用して抗議文を千葉県警に送付している以上、その理屈は通らないであろう。

    そのうえで両者および千葉県警に必要なのは、「なぜ戸定梨香氏を起用したのか」という経緯の説明であり、それについてどういう意見があるのかという議論を重ねることである。

    戸定さんを雇用する会社の代表はたびたびメディアのインタビューに応じたり、記者会見を開いたりしており、対話の姿勢を見せている。一方で、議連側は「多数の意見に個別には答えられない」との簡易的なコメントを発表するのみで、対話の姿勢を示しているとは言い難い。戸定さんも所属会社の社長も議連側も、「女性の権利を守りたい、松戸市を盛り上げたい」という目的は同じであるがゆえに、対話の機会がないのは非常に残念だ。

    大切なのは、今回の騒動をこれまでと同様に「過去の一つの事案」とせず、話し合いの場を持ち、コンテキストを共有するための丁寧な議論を重ね、双方の妥結点を見いだすことだ。うやむやにしてしまっては、近い将来また似たような別の事案が起き、同じことが繰り返されてしまうだろう。Vチューバーなど、現実と虚構にまたがる2.5次元的存在が登場してきた現在、こうした議論がより重要になることは間違いない。 (横浜国立大学教授 須川 亜紀子 構成=プレジデントオンライン編集部)

    須川 亜紀子(すがわ・あきこ) 横浜国立大学教授。ウォーリック大学大学院映画テレビ学部修了(PhD)。2017年から現職。アニメや2.5次元文化をジェンダーの視点から研究。著書に、『少女と魔法 ガールヒーローはいかに受容されたのか』(NTT出版)、『2.5次元文化論 舞台・キャラクター・ファンダム』(青弓社)などがある。


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