日本政府が米国などと足並みをそろえ、事実上の「外交的ボイコット」に踏み切った北京冬季五輪に対し、経済界は静観を決め込んでいる。企業にとって二大経済大国の米国と中国は重要市場であるだけに、政治的な対立に距離を置くのが得策との考えだ。
国際オリンピック委員会(IOC)の最上位スポンサーにはトヨタ自動車とパナソニック、ブリヂストンが名を連ねる。各社とも人権方針を掲げ、強制労働や児童労働を認めず、人権尊重の姿勢を鮮明にしているが、スポンサーを降板するなどの対応についてコメントはしていない。
経済界は、日中関係が冷え込む事態に神経をとがらせる。
経済同友会の桜田謙悟代表幹事は24日の会見で、「旗幟(きし)鮮明にすることが国益にかなうとは必ずしも思わない」との考えを改めて強調。日本政府の対応を「ボイコットと言っているわけではなく、人権問題があるので五輪については憂慮しているとか、参加について慎重に考えざるを得ないということも一切言っていないという点で良い判断をした」と評価した。
経団連の十倉雅和会長は20日、「国益を考えて落としどころを探って、それが『曖昧だ』と言われても良いと思う。戦略の問題だ」との認識を示していた。
ただ、東京五輪・パラリンピックでは、大会組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言を受け、一部のスポンサー企業では社内で協賛自体を批判する声が上がった。中国の人権問題に一段と厳しい目が向けられれば、スポンサー企業も世間の非難を浴びることにもなりかねず、対応に苦慮することになりそうだ。