2001年―デフレ時代に百“味”繚乱! ラーメン激戦区・高田馬場

女性視点を加え、学生街ラーメンは多様性で生き残る

豊穣なラーメン文化が育まれてきた高田馬場~早稲田エリアだが、近年はその基盤になる「ワセメシ」、つまり早大生御用達の飲食店に廃業が相次いでいる。先に挙げた『メルシー』と並んで早大生に愛されたラーメン店『ほづみ』は2012年に店を畳み、タンメンで知られた『稲穂』も2014年に暖簾を下ろした。2016年には食べざかり学生の胃袋を支えた洋食店『キッチンエルム』が、2018年には大隈重信が愛し、「カツ丼・カレー南蛮発祥の店」とも言われた蕎麦屋『三朝庵』が廃業。ジャズ喫茶や名画座にゆるやかな時が流れた学生街にも、斜陽ムードが漂う。

その背景にあるのは、シビアさを増す当世学生事情だ。可処分時間がスマホとSNSに奪われまくる中、大学の昼休みはかつての90分から50分に短縮され、のんびりランチを頬張る暇もない。2009年には早稲田キャンパス内にコンビニが出店し、早大生たちは街に出るよりコンビニ、ファストフードで腹を満たすようになった。しかし、人情味豊かな古豪ワセメシが一つ、また一つと姿を消す中、高田馬場~早稲田ラーメンには今季もブレイクをうかがう新店舗の姿が絶えることはない。

学生街を生き抜くラーメン店の成功モデルは、もう一つのキー店『渡なべ』にあった。それは「女性からの支持」だ。早稲田大学は、日本の総合大学では初めて全学部で女性に門戸を開いた大学として知られる。データを見ると、1990年には19.3%だった女子学生比率は2002年には28.5%まで急伸。ワセジョこと女子早大生は着実に増えているのだ。

『渡なべ』は奥まった路地にあり、和食屋を思わせる落ち着いた外観で、店内はダウンライトでシックな雰囲気。女性インフルエンサーとして知られる本谷亜紀氏も、「隠れ家風で奥まった場所にあり、一枚板のカウンターがある店内がお洒落で、OLさん1人でも落ち着いて食べられます」(『新潮45』2014年1月号)とリコメンド。こうした女性支持が20年にわたる安定経営を支えてきたのは確かだろう。

女性をキーにした情報発信・伝播について、創業直後の『渡なべ』店主・渡辺樹庵氏は次のように述べる。

「おいしい店の情報は、ラーメン好きの男性から、同じサークルや会社の女性へとすぐに伝わります。だから一度贔屓にしてもらえればあとは男女を問わずまわりの人たちを呼んできてくれる。これが大きい」(『BRUTUS』2004年6月1日号)

一帯のラーメン店を俯瞰すると、柳宗理のファニチャーを取り入れた『麺屋宗』、具材の彩りにサニーレタスやベビーリーフを用いる『鶏白湯麺蔭山』など、女性を意識した環境づくり、味づくりは随所で目にとまる。ラーメン女子博プロデューサーの森本聡子氏も、早稲田の家系ラーメン『違う家』の紹介で、「中太の麺は女性でも食べやすいよう短めにカットするなど、女性にフレンドリーな家系なのだ」(昭文社『東京ラーメンコレクション』)と、女子のハートをつかむ激戦区の底力に注目している。

バンカラ気質が幅を利かせた学生街の風は、本宮ひろ志のマンガから店名をとった『俺の空』に色濃く残るが、女性に支持され、いまの空気にアジャストしていく店もある。時代とともに変化を遂げ、コクと味わいを増す高田馬場~早稲田ラーメン。激戦史はさらに厚く紡がれ、職人の志まで熱く次代に伝えていく。

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