総質量445トンのISSを「宇宙機の墓場」に葬る 宇宙にも影を落とすウクライナ情勢

NASAが2月1日、ISS(国際宇宙ステーション)を2031年1月に大気圏へ再突入させることを示唆した。ISSはサッカーコートほどの大きさがあり、総質量は445トン。その巨大建造物を「宇宙機の墓場」と呼ばれる南太平洋の海域に引き摺り落とすのだ。ISSはどのような行程を経て終焉を迎えるのか? NASAが公表したレポートをもとに、宇宙開発をめぐるこの史上最大イベントを解説したい。

到達不能極「ポイント・ネモ」へ落とす

▼「宇宙機の墓場」とは?

ニュージーランドから東へ3900kmの場所に「宇宙機の墓場」と呼ばれる海域がある。一般的には「ポイント・ネモ」として知られているが、ネモとはラテン語で「nobody=誰もいない」という意味。ジュール・ヴェルヌの小説「海底二万里」に登場する船長キャプテン・ネモの名もこれに由来している。

ポイント・ネモとは陸地からもっとも離れた海域(筆者作成、Google Earth)
ポイント・ネモとは陸地からもっとも離れた海域(筆者作成、Google Earth)

ポイント・ネモは、南太平洋の英領ピトケアン諸島、イースター諸島、南極のメイハー島の3島から等しく2688km離れている。つまりこのポイントは、地球上において陸地からもっとも遠い場所。陸から離れているので栄養素が少なく、生物も少ないため漁船もいない。つまり宇宙機を落とすには絶好の場所とされている。

これまでに300機近くの人工衛星がこのポイント・ネモに落とされている。宇宙機の大部分は大気圏への再突入時に焼失するが、チタン製の燃料タンクや、硬質材料でできたエンジンの一部などがここへ降り注ぐ。

▼ネモに落とされた過去最大の宇宙機

ネモに落とされた過去最大の宇宙機は、ロシアの宇宙ステーション「ミール」(2001年落下)で、その質量は約120トン。制御不能に陥って世界を震撼させた中国の宇宙ステーション「天宮1号」(8.5トン、2018年4月)や、「天宮2号」(8.6トン、2019年7月)も、この海域に落下している。これら歴代の宇宙ステーションと同様、総質量445トンのISSもこの「墓場」に落とされる予定だ。

ISSの破棄を「2031年1月」に想定

▼ISSを地表に落とすために不可欠なこと

ISSは高度410~420kmの地球周回軌道上を時速2万7,600kmで飛んでいる。秒速にすると1秒間に7.5km、ライフルの弾丸の約10倍の速度だ。

クルー・ドラゴン「エンデヴァー号」から2021年11月に撮影されたISS。(NASA)

もしISSの機速がゼロだったら地球上にストンと落ちてくるが、この凄まじいスピードで地球を周回しているため、機体に遠心力が働いて落ちてこない。じつは地球の重力に引っ張られて落ち続けているのだが、地表が丸いため、いつまで経っても地表に到達しない、と言ったほうが正しい。

では、このISSの高度を下げるには、または地表に落とすにはどうするかというと、ISSの速度を落とせばいい。そのためにISSの進行方向に向けてロケットエンジンを逆噴射する。

これが2022年2月1日にNASAが公表したISSを制御落下するための暫定プラン。その落下時期は2031年1月と想定されている。

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