岸田政権は消費減税でウクライナ危機を乗り越えよ

対して日本銀行はデフレ脱却を目標にした金融緩和を継続している。米国が金融緩和スタンスをやめて、他方で日銀は継続している。これが円安ドル高の背景である。経済政策のスタンスが決定的に重要になる。これも人々の予想によってマネーが動く実例である。

日本銀行がインフレ目標2%を設定しているのも、この人々の予想をコントロールすることにある。だが、この予想のコントロールはしばしば深刻な危機に直面してきた。景気対策には金融政策と財政政策があるのは常識だ。日本のようにデフレ脱却を目指すのであれば、金融緩和だけでなく財政政策も減税や公共事業などの増加で協調するのが普通である。だが、日本では2014年と19年の消費増税で逆噴射してしまう。景気対策の動きがバラバラだと、人々の予想も混乱する。日本銀行がいくらインフレ目標を打ち出してもなかなか達成できないのは、財政政策が協調しないことに大きな原因があった。

ウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン演説後、記者団の取材に応じる岸田首相=23日夜、首相公邸
ウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン演説後、記者団の取材に応じる岸田首相=23日夜、首相公邸

最近の状況はどうだろうか。さらに輪をかけてひどいものになっている。背景として、一部のマスコミが牽引している「悪い円安」や「悪いインフレ」報道がある。円安というのは、金融緩和スタンスの言いかえである。国内的にはインフレに作用する。これから4月になると菅政権で行った携帯料金引き下げの効果が、統計処理上、無視される。そのため公表される物価が一気に上昇するだろう。

予想されるのは、ワイドショーなどで盛んに「物価が高い」ことを過剰に喧伝されることだ。それは日銀の金融緩和姿勢への批判になるだろう。4月以降の物価をみると、携帯料金引き下げ効果の剥落によって、生鮮食品やエネルギーを含んだ総合指数は対前年度比2%(現状は0.9%)を上回る可能性がある。「日銀は2%のインフレ目標を立てているのでこれで目標達成だ」とかいう皮相な意見も出てくるだろう。だが、これは日本経済の実勢を表していない。

価格の変動の激しい生鮮食品やエネルギー関連を除いたものの方が、経済の実勢をよく反映している。携帯料金効果の剥落は、1%程度の物価高を統計上もたらす。生鮮食品を除く物価指数(コアCPI)は対前年比1.6%(現状は0.6%)、生鮮食品とエネルギーを除く物価指数(コアコアCPI)は対前年比0.9%(現状はマイナス0.1%)である。ウクライナ戦争の影響などで多少まだ上がる可能性はある。しかし日本経済の真相はいまだデフレ体質のままだ。米国は7.9%、英国は5.5%、ユーロ圏は5.9%である。まったく日本と欧米ではインフレをめぐる事情が違う。

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