他方で、われわれの生活は厳しいではないか?というのもまた正しい。例えばデフレ体質の経済が続くと、我々の給料も上がらない。企業は資源価格の上昇によってモノをつくる際にコスト高に直面している。だが、なかなかこのコスト高を消費者が実際に買う最終価格に転嫁しづらい状況が続いている。そのためこのコスト高は、企業が雇っている人たちの給料の低下やあるいは雇用の減少となって表れる。
人手不足が続く米国とは違い、日本の雇用は政府の雇用調整助成金で維持され、また非正規雇用もコロナ禍前に比べて大きく落ち込んだままだ。もちろん給料もはっきりと上がらない。この段階で金融緩和をやめ、財政政策もしょぼくなれば、さらに悲惨な結果になることは自明だ。
だが、他方でガソリン価格の高騰が大きな話題になっている。今後、ウクライナ戦争の長期化でさらにエネルギー関連や一部の食品の値段もさらに上昇するかもしれない。これらについては、現状ではいわゆるガソリン税へのトリガー条項凍結解除が、政治的な話題になっている。筆者は、むしろデフレ経済脱却のためにも、消費減税を強く勧めたい。もちろんガソリンにも消費税がかかっている。消費減税なので、ガソリン代が軽減するだけではなく、われわれの可処分所得全体が大きく改善するだろう。個人的には一時的に5%以上の減税幅を勧めたい。
だが、大きな障害がある。「減税はなにがなんでも反対」とする財務省の存在だ。そして財務省管理内閣ともいわれる岸田文雄首相の経済政策スタンスだ。政策のスタンスは、今回強調したように、人々の予想に大きな影響を与える。岸田首相の財務省的な緊縮スタンスは、株価にもマイナスの影響を与えている。株価だけではなく、日銀の金融政策にも悪影響を与え、さらにデフレ経済からの脱却を難しくし、また働く人たちの給料は上がらないだろう。
特に最近の日銀の審議委員案は、明瞭に金融緩和に消極的で、さらに消費増税に賛成する勢力の代表だった。この人事案は、今回の審議委員の選抜だけではない。来年の日銀の正副総裁の人事にも大きく影響する。いわば日本をずっとデフレ経済のままにしてしまう人事が実現するのではないか、と「予想」がコントロールされることだ。大手マスコミの中ではそのようなデフレ主義の主張がすでに出ている。
いまの日本経済には金融緩和の維持と、そして強い財政政策、特に消費減税が必要だ。