「FIRE」達成で直面する悩み…“職業欄”どう書くべきか たぱぞう×おけいどんFIRE対談(5)

お金のにおいを出すのは危険

たぱぞうさん

おけいどんさんはFIREを達成して困ったことはありましたか。

桶井さん

世間体は気になりませんでした。世間体とは、自分が勝手に自分の心の中で作り出すもの、現状維持バイアスだと思っています。今はリモートワークも普及しましたし、平日に自宅にいる人は珍しくありません。平日がお休みの職業だっていくらでもあります。

老後資金が不足しないように金融庁がまとめた報告書

ただ、たぱぞうさんも先ほどおっしゃっていましたが、職業を尋ねられた時は少し困ることがありますね。世間話では「フリーランス」や「個人事業主」と答えています。さらに質問されたら、「本を出したり、コラムを書いたり、執筆業です」と答えます。

あとはかしこまったシーンです。母が入院する時に、病院の保証人欄にある職業に何と書くか。携帯電話の機種変更の際に、職業欄に何と書くか。不審者を見つけて110番して警察官に勤務先を聞かれた時、答えに詰まりそうになりました。

病院では「フリーランス」と書きました。携帯電話のときは、当時、父がまだ会社を経営していて、私は難病になった父の代理を務めていたので、父の会社名を書きました。警察には、FIRE直前で会社に行っていなかったものの籍はあったので、会社名を答えました。今後は「フリーランス」とか「執筆家」と答えるつもりです。

「投資家」はまだまだ通用しませんね。怪しいと思われる。FIREは絶対にダメです(笑)。世間ではまだ通じないし、仮に通じるとしても、お金のにおいを出すのは危険です。経済的自立、つまりお金があることを実社会でにおわせるのはデメリットが大きいと思います。

たぱぞうさん

私は金融資産が1億円に到達し、その資産を管理するためにプライベートカンパニーを設立しましたが、おけいどんさんは法人化は考えていないのですか。

桶井さん

おかげさまで昨年は50件以上の取材や寄稿に対応しました。SankeiBizさんもそうですが、もう1社コラムを連載させていただいている出版社があります。ただ、出版社によって原稿料の支払いが翌月払いであったり、4カ月後であったりバラバラで、確定申告のために「仕入れ」を立てるのが面倒なので、今のところは個人でやっています。

たぱぞうさん

そういうことでしたか。それにしても、最近はFIREがちょっとしたムーブメントになっていますよね。

桶井さん

はい。そのムーブメントの背景には、新型コロナウイルス禍であるという特殊要因も働いているのではないかと感じます。満員電車やオフィスなどでは感染のリスクもあります。賃金や雇用も不安定です。著名な財界人が、終身雇用の限界だったり、45歳定年説に言及したりしていることも要因でしょう。

たぱぞうさん

そうですね。あと、仕事の質も変わってきたということもありますね。昔の仕事って結構、シンプルな部分があったと思うんです。ところが、高度に発達した現代社会ではコンプライアンス(法令順守)とかが厳しいので、書類仕事やネゴシエーション(交渉)が増えて、本来やりたい仕事に寄り添えないような仕組みになってきているところがあるのかなと感じます。それは、組織が大きければ大きいほど、そういうプロセスがあるのは当然、それは従業員を守るためでもあるわけです。

その半面、そういう仕事ってつまらないですよね。私もそう思っています。だんだん、何のために仕事しているのか分からないということになっていきます。

桶井さん

おっしゃる通りですね。60歳定年まで普通に働くと、退職金と年金で普通に幸せな老後が訪れるという昭和のスタンダードモデルがなくなったことも大きいと思っています。一つの会社だけに頼れない、一つの収入だけに頼れない、そして老後も年金だけではダメだと考える人が増えているんでしょうね。一方で、国は70歳定年に持っていきそうな気配もありますし、やはり年金問題があって、FIREを意識する人が増えているのだと思います。

とはいえ、失望していても仕方がなく、行動することでしか解決できません。それがFIREムーブメントにつながったのだと、私は思います。

たぱぞうさん

なるほど。現代はよく個性の尊重ということが言われます。学校教育でも個性が尊重されていて、今、個性を尊重しない人というのはいないと思います。受け皿としての社会というのは、まだまだそこまで成熟していないように見えますけど、いったん外に目を向けてみると、さまざまな生き方をしている人はいるんですよね。

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