カルビーのポテトチップス塩味が“非ロジカル”にダブりまくりなワケ

先週、カルビーが「かっぱえびせん」などの商品について内容量を減らすというニュースがありました。生活必需品でもないお菓子の内容量の減少、つまり実質値上げがこのように取り上げられるのはお菓子大国である日本ならではかなと思います。良い機会なので、カルビーのラインナップを題材にMECEについて学んでみたいと思います。

MECEとは

MECEは「漏れなくダブりなく」を英語で表記した「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、ロジカルシンキングの基本概念です。

ビジネスにおいては、「考え漏れ」があれば、そこで大きな機会損失が発生したりします。たとえば、多様性を尊重する昨今、男性用と女性用だけ考えていて、LGBTQについて「考え漏れ」をしていては大きな問題が発生する可能性がありますよね。

また「考えのダブり」は非効率につながります。たとえば、1つの企業内に「海外事業部」「国内事業部」「新興国グループ」が存在していたら、「海外の新興国」に対応するグループが2つ存在してしまうといった感じですね。

カルビーの塩味がダブりまくりな件

一般的にはあらゆる場面でMECEの状態になっていることが大事と言われていますが、そうではない戦略が存在するのです。カルビーのポテトチップスのなかでも、王道の「塩味」のラインナップを簡単に見てみます。

  • ポテトチップス うすしお味
  • ポテトチップクリスプ うすしお味
  • 堅あげポテト うすしお味
  • 堅あげポテト”プッチ4″ うすしお味
  • ポテトチップスギザギザ 味わいしお味
  • シンポテト 絶妙塩味

いかがでしょうか? 縦割り組織の悪い例かのような「ダブりまくり」なラインナップだと思いませんか?

カルビーのポテトチップス「塩味」には、塩加減・食感・素材などによって複数の商品が存在する(SankeiBiz編集部)

MECEの観点から言えば、「うすしお味」が好きな顧客を取り合っている=共食い=カニバリの状態だと言えそうです。もちろんこれは、MECEを知らないわけでもなくお互いの開発チームの風通しの悪さから発生したものではありません。意図的なダブり戦略なのです。

「塩味もコンソメ味も、どっちもそこそこ好き」

MECEの考え方にも弱点があるのです。それは、ダブりなく分けていたとしてもそれが唯一の分け方ではないということです。つまり「塩味が好き」と「コンソメが好き」で分けることができているつもりでいても、実際には「どっちもそこそこ好き」というような層がいて、「塩コンソメ」という商品で割って入る余地が残っていたりするということです。

(筆者/SankeiBiz編集部)

同様に、味の好みで分けていては不十分で、実は食感にも「柔らかい」「堅い」でこだわりがあったというように「分ける軸が不足していた」という落とし穴もあります。柔らかめの食感で全ての味のラインナップを揃えていて「漏れがない」と考えていても、それら全ての味において「堅い」食感のラインナップが漏れていたということもあり得るのです。

(筆者/SankeiBiz編集部)

自動車販売にも共通する「浮気」予防戦略

このようなMECEの隙をついた他社参入に対抗する意味であえて同じ塩味でも色々なバージョンを用意することで、自社の塩味好きの「ちょっとした浮気」を防ぐ役割を果たしているのです。

この戦略は自動車のラインナップにおいても有効とされています。自動車のラインナップを見ると、ほぼ同じような性能でほとんど違いがわからないというような車種が存在するのです。「こんな要望にはこれ!」「このような顧客にはこれ!」というような効率的なラインナップになっていません。

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