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世界で愛されるムーミン 誕生に秘められたソ連侵攻

世界的な人気をもつキャラクター「ムーミン」の漫画を紹介する「ムーミンコミックス展」が愛媛県美術館(松山市)で開かれ、約280点の原画やスケッチ、ドローイングなどが展示されている。作者のトーベ・ヤンソン(1914~2001年)はフィンランドに生まれ、第二次世界大戦を経験。戦争に嫌気がさし、描き始めたのがムーミンの物語だった。

トーベ・ヤンソン(左)とラルス・ヤンソン(©Moomin Characters TM)
トーベ・ヤンソン(左)とラルス・ヤンソン(©Moomin Characters TM)

会場ではムーミン一家、スナフキンやニョロニョロといったおなじみのキャラクターの原画や新聞漫画などが展示され、白黒の世界ながら細かく描きこまれた愛らしい作品の一つ一つをゆっくりと鑑賞することができる。

また、英国の新聞連載の途中からは弟のラルス・ヤンソン(1926~2000年)が担当していたことにも焦点を当て、2人の漫画のそれぞれの特徴を紹介している。

ムーミン(複製)の人形。中央はトーベ・ヤンソン(©Moomin Characters TM)
ムーミン(複製)の人形。中央はトーベ・ヤンソン(©Moomin Characters TM)

父は彫刻家、母はグラフィックアーティストという芸術一家に生まれたトーベは子供のころから芸術家を志し、15歳でイラストレーターとしてデビュー。その後、童話作家、画家などのマルチアーティストとしての地位を築いていった。

第二次世界大戦が勃発したのは1939年。9月1日にドイツが、同17日にソ連がポーランドに侵攻したのが始まりとされる。ソ連は同11月末にはフィンランドにも侵攻を開始した。これは「冬戦争」と呼ばれ、ソ連は国際連盟を除名された。翌年3月に講和条約により停戦。フィンランドは工業地帯を中心に国土の10%をソ連に奪われたものの、独立を守り抜いた。

トーベは戦争の嫌な雰囲気の気晴らしとして、ムーミンの物語を作り始めたという。雑誌に掲載する風刺画に描いていた怒った顔をした生き物を「ムーミントロール」と名付け主人公とした。45年、戦後の混乱期に小冊子「小さなトロールと大きな洪水」が刊行され、今に続くムーミン人気の出発点となった。

戦争に関する作品として、54年から英国の「イブニング・ニューズ」で連載が始まったコミックスの第71話に「ムーミンたちの戦争と平和」がある。

ムーミン谷にやってきた平和主義者に「グータラ帝国主義者だ」と決めつけられたムーミンたちはけんまくにのまれて反戦の署名活動に加わる。そんなとき、「山クリップダッス」と「谷クリップダッス」との間に戦争が始まる。スニフが発明した同時に10本の矢を射ることができる「究極の武器」が双方に渡ってしまう最悪の事態に。このとき、ムーミンママがニョロニョロの大群を呼び、両陣営から矢をとってくれば1本につき、電球1個を交換すると提案する。ニョロニョロに矢を持っていかれた両陣営は戦いができなくなる-というストーリー。

イブニング・ニューズでの連載前の47年には「ムーミントロールと地球の終わり」がフィンランドの「ニィ・ティド」紙に掲載。48年の「たのしいムーミン一家」はフィンランドとスウェーデンで評判になり、英国にも紹介された。

イブニング・ニューズ紙の連載で人気は定着。世界40カ国に配信されるまでになった。トーベが多忙になると、60年以降は弟のラルスが74年(連載終了は75年)まで担当したという。

愛媛県美術館の専門学芸員、武田信孝さんは「ムーミンは小説やアニメのイメージが強いが、新聞連載の漫画が世界的な人気に火をつけた。弟が代わって絵を描いていたことも知ってほしい」と話している。

同展は全国11会場の巡回展で、愛媛県美術館は5月29日まで。6月18日~8月28日は東京富士美術館で開催される。(村上栄一)


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