ドイツ南部シュツットガルトで開かれた先進7カ国(G7)の農相会合は14日、2日間の日程を終えて閉幕した。ロシアによるウクライナ侵攻で脅かされた食料安全保障の確保などを議論。侵攻による「世界の食料安全保障への重大な影響」に懸念を示し、国際機関と連携して高騰する食料価格の動向を監視することで一致、ウクライナの農産物の生産・輸出を支援するとした共同声明を採択した。
会合にはウクライナのソルスキー農業食料相も参加し、ロシアが穀物を略奪していると明かした。小麦やトウモロコシの世界的産地のウクライナだが、ロシア軍の妨害で輸出が滞り、供給不安の高まりから穀物価格の高騰を招いている。
日本からは武部新農林水産副大臣が出席。武部氏は、米国の不作にウクライナ侵攻の影響も重なり、日本では政府が輸入小麦を製粉会社に売り渡す際の価格が4月から17・3%も引き上げられるなど穀物価格の高騰にも触れ、「この状態が長く続くと、価格だけでなく量の危機に陥る可能性がある」と対応の必要性を訴えた。
声明では、ウクライナへの食料供給や農家支援を約束。国連食糧農業機関(FAO)などに価格動向を分析するよう求めた。G7は「不当な規制の行使に対抗する」として、世界貿易機関(WTO)で議論するよう働きかける見通しだ。
ただ、今回の会合では、食料安全保障の確保に向けた具体的な対策までは踏み込まなかった。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「食料備蓄システムの構築など、食料危機にひんする途上国に対して実効性ある具体的な取り組みまで議論しなければ、会合開催の意味がない」と批判する。
さらに、G7で著しく食料自給率が低く、周囲を海に囲まれた島国である日本の場合、食料安全保障上の課題は大きいという。山下氏は「中国の台湾侵攻により重要な海上交通路(シーレーン)が使えなくなることも想定した食料安全保障対策が急務だ」と指摘。その上で、「農地を増やし、日本の主食であるコメの生産量を拡大するなどの有事の備えが必要」と警鐘を鳴らす。(西村利也)