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入試の定員「男女比7:3」が差別なら、男女同数でも「同得点の女子だけ不合格」は差別では?

遡ること4年ほどになるが、東京にある中堅どころの私立医科大学で、医学部医学科の一般入試で女子受験者の得点を一律減点していたことが発覚し、一時的ではあったが大きく問題視された。発覚直後はいくつものメディアが取り上げ、多くのTV番組でもその妥当性について議論が交わされた。

東京医科大学正門(産経新聞社)
東京医科大学正門(産経新聞社)

「男女別」の対応という点では、一部の学科で女子枠を設けたり、公募推薦入試で女子受験生に加点したりといった例はあったが、最も問題視されたのは、その医大が募集要項に男女の定員などを明記しておらず、減点行為についても全く説明していなかった点である。

実際の点数操作の中身と結果は以下のように報じられている。

2次試験では、全ての受験者の小論文の点数に0.8を掛けて一律に減点した上で、現役及び3浪までの男子には10~20点を加算(女子と4浪以上の男子には加算なし)。結果、男子の合格者は141人、女子は30人となった。

つまり、男子かつ若年を優遇するような採点基準を設けていたのだ。文部科学省の担当者は「条件を公開せずに不当な性差別をしていたとしたら問題」と、“条件を公開せずに”と付言している。

では、この「条件」があらかじめ明確になっていれば必ずしも不公正ではないのか?

まず、点数操作や男女別の定員の公表がされていないことは措いて、“私立医大の入試において”合格ラインに男女差を設けること自体が不合理に当たるのかどうかを考えてみたい。

「採用試験」ならば若年男子優遇も妥当?

発覚当初は、猫も杓子もマスコミも、入試での女性減点は「女性差別だ!許さない!」と非難囂々、侃々諤々。官僚子弟の不正入学発覚時には発生しなかったデモ隊がその医大の正門前に集結したりしたが、その後徐々に風向きが変わり風力も弱まっていく。

後日文部科学科省が女性差別として名前を公表した医大は、偏差値的に中堅の私立に集中している。これには、医大の入試が実質上、系列病院の採用試験を兼ねていることが背景にある。中堅私立医大では、系列病院の人材を確保する上で母校OBが命綱となっているからだ(一方、下位の医大で男子を優遇すると、医師国家試験で不合格者が続出してしまい、将来、致命的な戦力不足を招いてしまう)。

女医の産休・育休・時短による戦力低下は、「長時間労働」「夜を徹しての手術」「深夜の救急外来」「月10泊以上の当直」…のような激務を同僚の誰かがカバーしなければならないことを意味する。よって病院側としては、“一般企業と同様に”可能な限り若い(医師国家試験に受かるであろう)男子を優先したい。

医師でタレントの西川史子氏もワイドショーでは、「上から採っていったら女性ばかりになってしまう」「眼科医と皮膚科医だらけになってしまう」「希望者が少ない外科医になってくれるような男手が必要なんですよ」と解説し、「男女比を考えて採用するべき」と主張している。

実際、上記の発言と同時期のある調査では、女子一律減点に関するアンケートにおいて、現場にいる女医の65%が「理解できる」もしくは「ある程度理解できる」を選択している。

一般人の大半は、私立医大入試を一般的な学力試験と捉えているのに対し、当事者は「事実上の採用試験」と捉えていることからくる齟齬であろう。

なお、その後まもなく報道が下火になったのは、「医大入試における男子優遇(若手優遇)は、現在の医療体制を支えるための必要悪である」という認識が世間に広がったからだと筆者は受け止めている(あるいは、マスコミ業界も「激務で女性社員が少ない」という点は医療業界と共通しており、やりすぎるとブーメランが返ってくると考えたのかもしれない)。

いずれにしても、病院経営に関しては、国民のほぼ全員が利害関係者(当事者)であり、現制度下での男女平等化によって患者側に不利益が生じることは歓迎されないということだ。

ちなみに、現制度としては、2004年に導入された新研修医制度を挙げることができる。実際、その頃まで増加基調だった医師国家試験合格者の女性比率は、2003年を最後にその後は横這いである。

男女比率「三者三様」の中・高校入試は不合理か?

では、そもそも医大に限らず、入試において、募集定員の男女比を1:1から大きくずらすことは男女平等の観点で不合理なのだろうか?


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