暑さに強いパッションフルーツの生育にも打撃 農作物への影響広がる

    各地で過去最速の梅雨明けとなり、猛暑や水不足による農作物への影響が懸念されている。近年の温暖化を逆手にとり、関東で栽培が広がるパッションフルーツといった〝暑さに強い〟亜熱帯作物の生育にまで打撃を与えつつあり、他の作物への影響拡大は必至だ。気温の上昇と上空の寒気の影響で大気の状態が不安定にもなりがちで、局地的な豪雨やひょうによる被害の不安も拭えない。

    パッションフルーツ
    パッションフルーツ

    「パッションフルーツは暑さに強いとはいえ、35度以上の高温には弱い。5月までに苗を植えたものは予定通り収穫できるが、6月に花を咲かせた苗は生育が遅れる可能性もある」

    千葉県農林総合研究センター暖地園芸研究所の平井達也特産果樹研究室長は、早い梅雨明けによる猛暑期間の長期化が果実の成長を遅らせると不安視する。

    亜熱帯地方が原産のパッションフルーツの栽培は、鹿児島や沖縄といった温かい地域に限られていたが、近年の温暖化で千葉県の房総半島を中心に栽培適地が拡大。今や同県での生産量は全国4位の13トン(平成30年度調査)に達する。

    温暖化の進展から最近は露地栽培も広がりつつあるが、まだ中心はハウス栽培だ。千葉県館山市でパッションフルーツ農園を営むある生産者は、「ハウス内は40度を超す過酷な現場。猛暑日が長くなれば、生産者へのダメージも大きい」と話す。「ハウス内の温度を下げるために散水や遮光などの対応も必要になる」(平井氏)ため、農業資材の高騰で苦しむ生産者への負担がさらに増しそうだ。

    農林水産省が29日発表した東京都中央卸売市場に出荷される7月の野菜の生育状況と価格見通しによると、調査対象14品目のうち10品目が平年並みとなった。現時点で早い梅雨明けによる大きな影響はないとみる生産地が大半だ。

    とはいえ、連日の強い日照りで、一部の生産地ではトマトやキュウリの味や色が落ちるなどの品質低下の被害がすでに散見される。

    また、気温上昇で大気の状態が不安定になり、天気急変による被害も出ている。29日には北海道旭川市で大雨により川が氾濫し、農家の住宅や農業用ハウスが浸水。27日には栃木県さくら市で天気が急変し、ひょうとみられる氷の粒が降った。6月上旬には埼玉や群馬でひょうが降り、農作物や農業施設が大きな被害を受けており、猛暑以外のリスクも高まっている。(西村利也)


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)