スポーツカーで日本経済の浮沈わかる? カー・オブ・ザ・イヤー受賞車の軌跡
1年間に国内で発売された自動車の中で、最も優れた1台に贈られる「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」。2015年はマツダの4代目「ロードスター」がホンダ「S660」とのスポーツカー対決を制し、栄冠を手にした。マツダの受賞は14年の「デミオ」に続いて、2年連続で、ロードスターはちょうど10年前の05年に3代目がCOTYに輝いている。この10年間の受賞車の顔ぶれを眺めていると、自動車産業と日本経済の浮き沈みが見えてくる。
「バブル崩壊後、失われた20年の中で日本の自動車業界は良いことも悪いことも学んだと思います。そしてこういうスポーツカーをつくれる時代がきました。日本という地形、日本の自動車産業を生かしきった、本当に力のある日本らしいスポーツカー群だと思います」
昨年12月7日、東京都内で開かれたCOTYの授賞式。あいさつしたマツダの藤原清志常務執行役員は、他社が相次いでスポーツカーを投入していることに触れた。その上で、決意を以下のように述べた。
「きょう広島から来るとき、富士山が見えました。美しい国・日本でスポーツカーを開発し、つくり、走らせる。こんな国は他にはありません。スポーツカーをつくり続けることをみんなでやっていきたいと思いますし、私の世代の経営者が数値じゃなく、ロマンで経営をやっていけばできると思います。マツダはやります。一緒にやらせてください」
クルマ好きの支持を集めるスポーツカー。だが、開発や生産には時間も労力も必要だ。その割に、実用性のなさや価格がネックとなって、大量の販売台数は期待できず、ビジネスとして成り立たせるのは難しい。
特に、日本メーカーがつくる2人乗りの小型スポーツカーは米国や欧州などでも市場が限られ、業績が悪化するとリストラの対象になることもある。
だが、12年以降、トヨタ自動車「86」や富士重工業「BRZ」、ダイハツ工業「コペン」、S660、ロードスター…。国内各社はこぞってスポーツカーを投入している。
自動車産業 元気のバロメーター
2015年3月期決算で過去最高益が相次いだ自動車業界だが、ほんの少し前までは不振にあえいでいた。08年のリーマン・ショックに伴う世界的な需要の急減、11年の東日本大震災とサプライチェーン(供給網)の寸断、タイ洪水、超円高…。次々と苦難に見舞われた。それでも、メーカーは苦しみながら開発を続けてきた。個性豊かなスポーツカーは、ようやく立ち直った自動車産業のまさにシンボルのように見える。
エコカー時代到来
「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」の受賞車を見ると、日本の景気動向と重なる。マツダのロードスターがCOTYを受賞した05年。この年、政府・日銀は景気の「踊り場」脱却を宣言。日経平均株価は1万6000円台を回復した。国内新車販売は580万台を超え、好調な海外販売もあり、各メーカーの業績は上向いていた。
株価は翌06年に1万7000円を突破。好景気を象徴するかのように、トヨタの高級車ブランド「レクサス LS460」がこの年のCOTYに輝いている。
ただ、07年に入ると、米国のサブプライムローン問題が浮上し、株価も低迷。景気は先行き不透明感を増し始める。COTYもそれまで数年続いていた高級車や中型車ではなく、ホンダの小型車「フィット」が選ばれた。そしてリーマン・ショックの起きた08年には株価は1万円台を割り込み、COTYにはトヨタの小型車「iQ」が輝いた。
国内景気は急速に悪化。株価は8000~1万円台に低迷し、新車販売も500万台を割り込んだ。消費者の節約志向や環境意識の高まりを反映するかのように、09年「プリウス」(トヨタ)、10年「CR-Z」(ホンダ)、11年「リーフ」(日産)とハイブリッド車や電気自動車などのエコカーがCOTYを受賞した。
潮目変わった12年
潮目が変わったように感じられるのが12年だ。
株価は依然として低調だったが、エコカー補助金の効果もあり、新車販売は500万台を回復。COTYも、日本では普及していなかったディーゼルエンジンが評価され、マツダのスポーツ用多目的車「CX-5」が、「86/BRZ」などの強豪を抑えて受賞した。
株価が1万6000円台を回復した13年には輸入車として初めてフォルクスワーゲンの「ゴルフ」が選ばれた。株高で高額消費も持ち直し、国内新車販売でも輸入車の存在感は年々、高まっている。
スポーツカーが受賞の常連となるかどうかが、日本の自動車産業の“元気”を表すバロメーターにもなりそうだ。(田村龍彦)
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