シャープ神経戦…リストラ可能性浮上 赤字の太陽光事業、中高年の雇用どうなる

 

 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業から再建支援を受ける方向で交渉中のシャープに、リストラの可能性が浮上している。シャープが鴻海の再建案を評価したのは、官民ファンド、産業革新機構の提案と違って、事業再編を通じた解体を否定し雇用の維持を強調していたからだ。しかし、鴻海の郭台銘会長の言葉にはリストラの具体策も垣間見え、最終合意を目指す今月29日まで予断を許さない。(織田淳嗣)

 シャープの高橋興三社長は鴻海との交渉を優先させる考えを表明した今月4日の記者会見で「事業の一体性を保ちたい。雇用や生産地は最大限、維持してもらいたい」と説明。「(鴻海から)好条件で回答をいただいている」と語った。

 だが、翌5日には両者の認識の違いが早くも明らかになった。郭会長はシャープ本社での高橋社長らとの会談後、報道陣に対し「赤字の太陽光パネル事業以外は残す」と表明したのだ。同事業からの撤退を考えているとみられ、生産拠点の維持には言及しなかった。

 シャープの太陽光パネルは液晶と同様かつては世界シェアトップを誇った。現在もエネルギー事業全体の従業員数は約1700人、堺工場(堺市)などの大規模な製造拠点も抱える。

 だが、平成27年4~12月期では77億円の赤字を計上。通期予想も30億円の黒字から70億円の赤字に下方修正した。大規模太陽光発電所(メガソーラー)の需要伸び悩みなどで市場は縮小するとの予測もあり、先行きは不透明だ。

 郭会長はまた、「若い人たちに出資する。40歳以下の人は切らない」と強調した。40歳を超える中高年社員の雇用は保証しないとも受け取れる。昨年9月末時点でシャープ社員の平均年齢は43・3歳。若手を中心に人材流出は続いており、多くの社員が安泰とはいえない状況だ。

 これまでシャープは、不採算事業の撤退と3千億円の本体出資を軸とする革新機構の再建案受け入れで調整していたが、7千億円規模の巨額の資金を用意し一体再生や雇用の維持を強調する鴻海案に傾いた。

 ただ、SMBC日興証券の原田賢太郎・クレジットアナリストは「シャープの設備過剰感はぬぐえない。鴻海傘下でも一定のリストラは必要ではないか」と指摘する。

 シャープは鴻海との「信頼関係を築いた」(高橋社長)とするが、交渉決裂に備え、革新機構との協議を続ける道を残している。神経戦が続きそうだ。