「0円」是正ソフトバンク反発、深まる対立 スマホ指針、総務省は再度行政指導も
今月1日から適用されたスマートフォンの「実質0円」を是正するガイドライン(指針)をめぐり、総務省とソフトバンクの対立の構図が携帯電話市場に異変をもたらしている。総務省が5日、NTTドコモとともに行政指導を行ったが、ソフトバンクはその日、反論のコメントを発表。高市早苗総務相は8日の閣議後会見で行政指導に沿った改善を求めた。同省はまた、8日に各社から報告を受けた販売代理店への販売奨励金の状況を精査しており、問題が見つかった場合は、再び行政指導する方針だ。指針は携帯各社も参加した議論の末にとりまとめられたが、長年の商習慣を変革するには今後も混乱が予想される。
販売シェア落ち込み
ソフトバンクは5日、総務省からスマホ販売で行き過ぎた値引きの是正を求められた直後に、「(ドコモと)価格差がない限り、競争を減殺し、消費者に不利益を生じさせる」などと強い口調の反論を発表した。
「速やかに適正化を図っていく」と是正に前向きの姿勢も示しながら、その条件は「業界全体の進捗状態を踏まえて」とするなど、「実質0円」是正を柱とする総務省の要請に素直に従わない考えを示している。
総務省によれば、ソフトバンクは1日の時点で、他社からの乗り換え客に2年契約の場合、最大でスマホの端末価格を「実質0円」とするほか通信料金から約2万1000円も値引きをしていた。
ソフトバンクグループの孫正義社長が2月に「ユーザーに善かれと思って始めたサービスが『けしからん』といわれたので変える」と述べるなど、総務省の「実質0円」端末の是正に不快感を示していた。また、0円販売ができなくなったことで2、3月と販売シェアが落ち込んだことも反論の背景にありそうだ。
調査会社BCNによると、量販店のソフトバンクのシェアは3月は約22%と1月から7ポイントも減少した。道越一郎チーフエグゼクティブアナリストは「0円販売をやめたことによる影響が特に大きかったので総務省に反論したのでは」と推測する。
標的はKDDI?
総務省は現在、携帯3社から報告を受け、スマホ1台ごとの成約手数料や販売奨励金の実態を精査している。総務省の担当者は「成約手数料自体は問題はないが、実質的に端末購入補助に回されている実体がないかを調査している」とした上で、3月に実施した覆面調査や窓口に提供された情報とも照らし合わせて、各社の販売状況を詳しく調べている。
ソフトバンクとともに行政指導を受けたドコモの関係者は「販売奨励金の報告の標的はKDDIではないか」と話す。総務省の行政指導を免れたKDDIも詳細に調査しようとしているとの見方だ。総務省幹部は「販売奨励金は抜け道的なやり方をしているところもあるようだ」と話すように、携帯各社が他社の動向に疑心暗鬼となっている。
「指針は関係事業者にも意見を聴き、作成したものなのでぜひとも尊重していただきたい」。高市総務相は8日の閣議後記者会見でこう述べてソフトバンクを牽制(けんせい)したが、もともと、指針は各社が納得した上で策定されたもの。総務省幹部は「販売現場では指針を守りにくいのはわかっているが、だからこそ指針にした。総務省は悪役になってもいい」と話すが、総務省と携帯各社が綱引きを続ける一方、利用者が納得できる販売正常化の先行きは不透明なままだ。(大坪玲央)
■総務省のスマートフォン販売適正化施策の経緯
4月1日 スマホの端末購入補助の適正化指針適用
5日 NTTドコモとソフトバンクに過剰な値引き是正を行政指導。ソフトバンクが「(ドコモとの)価格差がないと消費者に不利益」と総務省への反論を発表
8日 高市早苗総務相が閣議後会見で「(ソフトバンクは指導を)尊重して取り組んでほしい」と発言。携帯各社が代理店向け販売奨励金の状況を総務省に報告
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