三菱UFJ社長、日銀に疑問 マイナス金利効果「企業も個人も懐疑的」

 
米ニューヨークのコロンビア大で講演する日銀の黒田総裁=13日(共同)

 日銀の「マイナス金利政策」の効果をめぐって日銀と銀行の見解に“溝”が出てきた。黒田東彦総裁は米ニューヨークの講演で「最強の金融緩和スキーム」と自画自賛したが、三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は東京都内での講演で「銀行業界にはネガティブ」と疑問視。邦銀トップが公の場でマイナス金利に懸念を示したのは初めてとみられ、金融政策のかじ取りは一段と難しくなりそうだ。

 米コロンビア大で13日(日本時間14日)講演した黒田総裁は、マイナス金利の導入から約2カ月間で企業向け貸出金利や住宅ローン金利が低下したと言及。政策の効果が「今後、実体経済や物価面にも着実に及んでいく」と期待感を示した。

 1月末のマイナス金利の導入公表後に円高・株安が進んだとの指摘には「マイナス金利の導入を発表しなければ、日本の金融市場はもっと悪化していた可能性がある」と反論した。

 黒田総裁は「マイナス金利の適用は当座預金残高の1割に満たず、直接的な(悪)影響は最小限に抑えた」とし、その上で「2%の物価目標の実現に必要な場合、躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を講じる」と強調した。

 これに対し、三菱UFJの平野社長は14日の講演で、マイナス金利政策について「残念ながら懸念を増大させる方向に働いてしまっており、企業や個人の投資を促すかどうかは分からない」と、効果に疑問を呈した。

 平野社長は、日本に先んじてマイナス金利を導入した欧州については「相応の効果があった」と評価。これに対し、デフレとゼロ金利環境が長年続く日本では「既に貸出金利は欧州より低水準。企業も個人も効果に懐疑的になっており、支出や投資計画を凍結している」と分析した。

 銀行業界への影響についても「マイナス金利(による負担)を顧客に転嫁できないだろうから、(収入である貸出金利からコストの預金金利を差し引いた)利ざやはさらに縮小し、基礎体力の低下をもたらす」と懸念を示した。

 日銀は金融機関の収益を圧迫しないようマイナス金利の仕組みを考案したが、「少なくとも短期的な効果は明らかにネガティブ。体力勝負の持久戦は厳しさを増し、長期化する」と主張した。

 直前には日銀の雨宮正佳理事も講演し、マイナス金利について「(金融機関の)会計処理やコンピューターシステムなどでどういう影響があるかを見定める必要がある」と述べた。