おしゃれ…アナログレコード人気復活 パナソニックなどプレーヤー新機種投入
アナログレコードの人気が復活している。アナログならではの温かく柔らかな質感の音源がシニア層だけでなく若い世代にも注目され、ここ数年は右肩上がりで市場が拡大。国内外の著名アーティストによるアナログ盤リリースも相次ぐ。電機各社もこうした動きに敏感で、久しぶりとなるレコードプレーヤーの新機種を今春以降投入する。(織田淳嗣)
日本レコード協会のまとめでは、平成27年の国内のレコード生産は66万2千枚と、22年の10万5千枚から6倍以上に拡大した。
国内で唯一レコードを生産する東洋化成(横浜市)のプレス工場はフル稼働の状態が続いている。月ごとのプレス枚数はこの3年で3万枚から10万枚に伸びたという。同社担当者は「さまざまなアーティストがレコードを出すようになったほか、個人が趣味の演奏を記録するケースも増えている」と説明する。
レコード市場が再燃したのは24年だ。この年、ビートルズやローリング・ストーンズなど大御所ロックバンドの往年の音源を修正して再録音したレコードが発売された。その後、きゃりーぱみゅぱみゅ、perfumeなど国内の若手アーティストらも新曲をレコードでも発売するケースが増え、裾野が広がってきた。
CDでは音楽をデジタル処理して録音する際、音を細切れにしてつなぎ合わせるため、音の一部が省略される。しかし、レコードはこうした処理がないため温かく柔らかな音となり、なめらかに聞こえる。このためシニア層だけでなく、レコードになじみの薄い若い世代にも注目され、最近の再評価につながっている。
小売店も商機とみる。ヨドバシカメラマルチメディア梅田(大阪市北区)は昨年秋にレコードプレーヤーの販売を拡大。新設した売り場には、1万円以下の入門モデルのプレーヤーをミニコンポやラジカセとともに置いた。スタッフの登日(とび)政光さんは「30代以下ではレコードを見たことがない人もおり、見た目のおしゃれさで興味を持つ人が増えた。レコード関連の問い合わせは昨年の2倍になった」と説明する。
首都圏を中心に展開しているレコードチェーン「ディスクユニオン」も昨年11月に大阪に初進出。店長の川村健さんは「関西は通信販売で需要がある地域だった。10代からシニア世代までと幅広い層が来店している」と手応えを語る。
電機各社も乗り遅れまいと、レコードプレーヤーの新機種を投入する。パナソニックは6月24日に音響機器ブランド「テクニクス」のターンテーブル「SL-1200GAE」(税別33万円)を発売する。世界1200台の限定生産で、日本では300台を販売する。昭和47年発売の「SL-1200」シリーズは、市場縮小で平成22年に生産を終了したが、「嘆願書が出されるなど復活を望む声が高かった」(小川理子役員)という。
ソニーも今月16日、世界で初めてアナログレコードを、高音質にデジタル処理された「ハイレゾリューション」の音でパソコンに録音、保存可能なターンテーブル「PS-HX500」(税別6万1千円)を発売する。新機種の発売は8年ぶり。広報担当は「自宅で聴いていたレコードを外出先でも楽しめる」とPRしている。
関連記事