生産停止拡大の恐れ、経営に打撃 「エコカー減税返還」「買い取り」の対策費数千億円規模に
三菱自不正三菱自動車の燃費データ不正問題で、国内で販売する多くの車種で法令とは違う方法のデータ測定が行われていたことが分かり、三菱自がさらなる販売や生産の停止に追い込まれる可能性が出ている。閣僚からは問題の車両の買い取りを求める声も上がる。顧客への補償やエコカー減税の返還など対策費は数千億円規模に膨らむ恐れがあり、経営への打撃は避けられない。
三菱自は、データの不正操作が見つかった軽自動車4車種について岡山県の水島製作所での生産を停止し、販売もとりやめた。外部有識者による原因究明には3カ月程度はかかる見込みで、長期化は必至だ。
さらに「アイ・ミーブ」など他の車種についても法令と異なる測定方法が使われたことが判明した。三菱自は「データの不正操作は確認されていない」として生産を続けているが、測定方法の変更で燃費が悪化するなどの問題が見つかれば、生産や販売の中止を迫られる可能性がある。
対策費の膨張も懸念材料だ。問題の4車種は燃費性能に応じ、自動車取得・重量税などが免除・減免されるエコカー減税対象車。平成27年4月以降に購入した「eKワゴン」(Mタイプ)なら省エネ法の燃費基準を20%上回り、減税額は計3万2800円。ただ、データの修正で基準を10%上回る程度になれば、減税額は2万4千円程度で、8千円以上返還する必要がある。63万台分で単純計算して約50億円になる。
顧客への補償も必要で、野村証券は、ガソリン代の補償(1台4万8千~9万6千円)やエコカー減税の返還額などを合わせた対策費用は425億~1040億円になると試算した。27年3月期の最終利益(1181億円)に匹敵する。
さらに、石井啓一国土交通相は22日の記者会見で「日本ブランドへの信用を失墜させかねない。(ユーザーからの)買い取りも含めて誠実に対応してもらいたい」と買い取りに言及した。対象車の中心価格は130万円程度とみられ、仮に半額の65万円で全て買い取ることになれば、費用は約4千億円になる。
いずれも問題の4車種に限った費用で、他の車種に広がればさらに膨らむ。今後、販売減や新車投入の遅れ、工場停止による採算悪化なども想定される。このため三菱自は27日に28年3月期決算を発表する予定だが、29年3月期の業績見通しは公表を見送る方向だ。
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