「ポケットモンスター」息の長い人気の秘密 20年の歴史、どこまで進化するか

 
高島屋京都店にオープンした「ポケモンセンターキョウト」=京都市下京区(志儀駒貴撮影)

 人気ゲーム「ポケットモンスター」が2月にゲームソフトの発売20周年を迎えた。モンスターを集めて対戦する当時としては斬新なゲーム方式や、子供を中心に幅広い年代に親しまれるキャラクター構成で、ソフトの世界累計販売本数は2億本を突破した。今年は人工知能(AI)や位置情報などの最新技術を取り入れたスマートフォン向けゲームの配信を予定し、時を経てなお進化を続けている。(牛島要平)

 3世代の集客見込む

 3月16日、高島屋京都店(京都市下京区)5階にポケモンの日用雑貨や文具などのグッズを販売する「ポケモンセンターキョウト」がオープンした。平日にもかかわらず午前10時の開店を待ちきれない約800人が行列をつくった。

 若い客が目立ったが、観光地とあって外国人の姿も目立ち、世界的な人気の高さをうかがわせた。

 同センターはポケモンブランドを展開する「株式会社ポケモン」(東京)が運営し、関西では大丸梅田店(大阪市北区)にある「ポケモンセンターオーサカ」に次いで2店目。京都にちなんだ「お公家さまピカチュウ」「舞妓(まいこ)はんピカチュウ」のぬいぐるみなどの限定商品も話題だ。

 「ポケモンで遊んで育った世代が30歳前後になり、子供を持つようになった。孫に買ってやろうというおじいさん、おばあさんも含め、3世代の集客が見込める」

 高島屋京都店の藤盛大輔セールスマネジャーがそう期待を込める。

 王道ビジネスモデルの先駆け

 ポケモンは、自然のさまざまな舞台に出現するモンスター(ポケモン)を捕まえたり、育てたり、友人同士で対戦したりできるロールプレーイングだ。

 平成8年2月に任天堂の携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」向けのソフト「ポケットモンスター 赤・緑」が発売されて以降、計約25タイトルのソフトが発売され、700種類以上のモンスターが生まれている。今年2月末現在でソフトの世界累計販売本数が2億100万本を記録した。

 「ポケモンには自然や妖怪といった日本人が古くから親しんできた要素が込められている」と語るのは、法政大の青木貞茂教授(広告論・ブランド論)。

 日本人は古くから、身の回りで「怪しい」「怖い」と感じる対象を妖怪としてイメージしてきた。江戸時代には「妖怪図鑑」や「妖怪カルタ」をつくるなど、妖怪をキャラクター化して楽しむ文化が出現した。

 ゲームの中で、自然に生息する不思議なモンスターを収集してコレクションをつくるポケモンも「伝統的なキャラクター文化の流れをくんでいる」という。

 また、ポケモンが子供のコレクション好きの本能をくすぐることが、日本にとどまらない世界的人気の背景にあるようだ。青木教授は「自然を探検して見つけた動物や植物を収集・分類する行為は、古今東西の子供の知的好奇心を刺激してきた」と話す。

 子供たちは頭の中で好きなモンスターを主役に、他の特徴のあるモンスターを脇役に配置し、自分の世界観をつくり上げる。青木教授は「虫取りをする少年の感覚。自然が少ない都会の子供はポケモンで虫取りの楽しみを味わっている」と分析する。

 一方、ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するカドカワの浜村弘一取締役は、ポケモンがゲームとしても画期的だったと指摘する。

 「新しいポケモンを見つけては、捕まえる遊びで3分に1回楽しめ、対戦でも自分で戦略を構築できるなど、これほどクオリティが高いゲームは20年前になかった」

 息の長い人気の秘密については「次の新作ゲームができるまでをカードやアニメなどでつなぐメディアミックス戦略で、その後のヒット作の王道ビジネスモデルを生み出した」と語る。

 止まらぬ進化

 ポケモンは今年、また新しいステージに踏み出しそうだ。

 株式会社ポケモンは3月10日、ポケモン史上初めて人工知能(AI)を取り入れた新作のスマホ向けゲーム「ポケモンコマスター」を今春に無料配信すると発表した。同社の石原恒和社長はホームページで次のようにコメントした。

 「ポケットモンスターシリーズではプレーヤーのパートナーはポケモンでしたが、今作ではさらに、頼りになるAIが新たなパートナーとして加わりました」

 ポケモンコマスターはAIを利用したアプリ開発を手がける「HEROZ(ヒーローズ)」(東京)と共同開発した。チェスのようにモンスターのフィギュアを動かし、相手陣地を攻略する。迷ったときにはAIに判断を任せて戦略を組み立てることができることが特徴だ。

 ヒーローズは、プロの棋士に初めて勝利したAIを開発した実績があり、AIを使った将棋のスマホ向けアプリ「将棋ウォーズ」を24年から配信している。

 同社の林隆弘・最高経営責任者(CEO)はポケモンコマスターについて「AIとともに戦うという新しい遊び方は、ボードゲームの世界に一石ではなく、隕石(いんせき)を投じるくらい、世界を驚かせることができるのではないか」とコメントしている。

 ポケモンの新機軸はそれだけではない。昨年9月には、衛星利用測位システム(GPS)などの位置情報を利用したスマホ向けゲーム「ポケモンGO(ゴー)」を今年中に無料配信すると発表した。

 任天堂のほか、米グーグルから独立した米ゲーム会社「ナイアンティック」と共同開発している。

 3月24日に公表された概要によると、スマホを手に屋外を歩くと地図上にモンスターの位置が示される。その地点に近づくと、プレーヤーがいる実際の風景の中にモンスターが出現。画面上の「モンスターボール」に指を滑らせて投げると、モンスターを捕まえることができる。

 株式会社ポケモンの広報担当者は「新技術を取り入れたゲームで、遊び方の幅を広げていきたい」と話す。

 20年の歴史を経てポケモンがどこまで進化するのか、21年目以降も目が離せない。