「ご当地映画」制作で地域の活性化を クリエイティブスタジオゲツクロ
□クリエイティブスタジオゲツクロ・作道雄社長
新たな地域活性化策として、特定の地域を舞台とした「ご当地映画」を制作する取り組みが増えている。滋賀県では、琵琶湖を題材とした映画「マザーレイク」が制作され、6月から公開される。地域の魅力が「見える化」されることで、県外だけでなく、地元の人にとっても新しい発見となり、県内外で新たな交流を生むきっかけとなる。経営環境の厳しい映画産業にとっては、若手が育つ機会にもなっているという。
--きっかけは
「高校生の文化祭で演劇の脚本と演出を担当したのが、映画や演劇の世界に興味を持つきっかけだった。そのうち、僕が当時好きだったドラマの脚本を三谷幸喜さんが手掛けていることを知り、三谷さんのようになりたくて演劇をよくみるようになった。大学入学後、学生劇団の旗揚げに関わり、その劇団の公演の企画などをした。自らで劇団『月面クロワッサン』を作ったのは大学2年のとき。『京都学生演劇祭』が旗揚げの公演となり、結果は準優勝だった。この経験を1回きりで終わらせたくないと思い、一生の仕事にすることを決めた。大学卒業後、アルバイトでためた資金などをもとに会社を設立した」
--事業を軌道に乗せるのは大変では
「人との出会いに助けられている。京都のテレビ局、KBS京都の関係者がたまたま月面クロワッサンの公演をみにきてくれたのが縁となり、自主制作したドラマ『ノスタルジア』を放映してくれた。脚本を書くにあたっては、ファンタジーという非日常の設定を1つだけ作り、ほかは日常的に展開させている。ファンタジーにありがちな無理な展開はしないようにしている」
--地域の活性化につながる制作に興味を持っている
「京都府南丹市の地域活性化プロジェクトで映像づくりに関わった。単にきれいな映像を撮るよりも、地域住民に愛される映像を撮りたいと思った。そこで、地域住民40~50人にビデオカメラを渡して、各自が思い入れのある風景などを撮ってもらった。その撮影の様子を映像に収めて4分半に編集した。住民には撮影対象にまつわる思い出などを語ってもらい、地域の歴史が分かる映像となった」
--映画「マザーレイク」が6月に公開される
「この映画でも地域住民に取材し、地元の人が滋賀らしいと考える風景を収めることにこだわった。滋賀県内外の700~800人が出演した。地域住民は当初、遠巻きにみていたが、時間の経過とともに一人一人がプロデューサーのように関わってくれた。映画の持つ力だと思う」
--地域活性化に携わることにやりがいは
「映画を作ることが自分の仕事であり、経済の活性化は含まれないと思っている。ただ、地元のパン販売店などが映画にちなんだ製品を開発してくれていることは、この映画が滋賀県民の地元愛を少しでも形にできた証しとして光栄に感じている」(栗井裕美子)
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【プロフィル】作道雄
さくどう・ゆう 京都大学在学中に学生劇団「月面クロワッサン」を立ち上げ、脚本、演出などを手掛けた。大学卒業後の2014年、同劇団を母体とした制作会社「クリエイティブスタジオゲツクロ」を設立。6月から公開される映画「マザーレイク」で全国デビューを果たす予定。大阪府茨木市出身、25歳。
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【会社概要】クリエイティブスタジオゲツクロ
▽本社=京都市中京区錦大宮町115-5 四条大宮グランドコーポ904
▽設立=2014年9月
▽資本金=900万円
▽従業員=2人
▽事業内容=映画、テレビドラマ制作など
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