延期続くMRJ、ライバル機が追撃 エンブラエル、高性能型を前倒し初飛行

 
三菱航空機のMRJ(同社提供)

 中部国際空港で主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を訪れる各国首脳にアピールしている国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」がライバルの追撃を受けている。ブラジルの航空機メーカー、エンブラエルは23日、MRJと同型で燃費性能が高いエンジンを搭載した新型機の初飛行を当初の予定よりも早く成功させた。MRJはライバルとの受注競争の面から、これ以上の開発遅れが許されない状況に追い込まれている。

 低下する優位性

 エンブラエルは今年下期に予定していた97~106席クラスの最新小型ジェット「E190-E2」の初飛行を前倒しして成功させた。同機は三菱航空機(愛知県豊山町)が開発する81~88席のMRJの最大のライバルとされ、2018年の初納入を目指している。

 エンブラエルは「E2」シリーズとして、19年に120~132席の「E195-E2」、20年に80~88席の「E175-E2」の納入も計画している。

 MRJは米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)の最新エンジンを搭載し、従来機よりも燃費性能が2割程度高く、低騒音というのが売りだった。

 だが、E2シリーズもP&Wの最新エンジンを採用し、MRJの優位性は低くなっている。それでも、三菱航空機の岸信夫副社長は「機体設計などから燃費性能は4~5%高い」とMRJの競争力を強調する。

 今後20年で、100席以下のリージョナルジェット市場は約5000機の需要があるとされ、三菱航空機は半数以上の受注獲得を目指している。燃費性能はE2シリーズより高いとみられるが、最大の課題は18年の納期を守れるかどうかになってきた。

 納入は4度延期

 MRJは半世紀ぶりの国産旅客機開発のため、計画は大幅に遅れ、初納入の予定は4度も延期されている。昨年10月にようやく初飛行を成功させたが、その2カ月後の12月には主翼の強度不足やソフトウエアの改良などで初納入が17年4~6月から1年程度遅れると発表した。

 三菱航空機は、これから日米で2500時間の飛行試験を行い、18年に世界の航空当局が安全性を認証する「型式証明」を取得した後に、ANAホールディングス(HD)へ初号機を引き渡す計画だ。

 受注は善戦 欧州からも引き合い

 これに対し、エンブラエルのE190-E2は当初19年に初号機を引き渡す計画だったが、18年に前倒しした。さらに今回、初飛行も予定より早めた。エンブラエルは型式証明の取得などの経験が豊富で、MRJはこれ以上の遅れは回避したいところだ。

 これまでの受注数はE2シリーズが640機、MRJは427機と、三菱航空機は半世紀ぶりの開発ながら善戦している。ただ、開発スケジュールが遅れれば、今後の受注競争に大きな影響を与える可能性がある。

 一方で、三菱航空機の森本浩通社長は「これまで受注できていない欧州の航空会社からも引き合いが来ている」と話すなど、初飛行以降、MRJの営業には追い風が吹いている。今年に入り、米国の営業拠点も強化しており、エンブラエルのお膝元でもある中南米での売り込みにも力を入れる方針だ。

 日本政府も伊勢志摩サミットに合わせてMRJをアピールするなど、全面的にバックアップする姿勢を示している。

 ただ、エンブラエルはMRJと差が開いていた開発期間を着実に詰めてきている。三菱航空機がトラブルなく、開発計画を予定通りに進められるか。ライバルとの受注競争は剣が峰ともいえそうだ。(黄金崎元)

 ■「MRJ90」と「E190-E2」の比較

 (三菱航空機(日本)MRJ90/エンブラエル(ブラジル)E190-E2)

 ・客席数

  81~88席/97~106席

 ・最大航続距離

  3770キロ/5185キロ

 ・最高速度

  時速963キロ/時速1003キロ

 ・就航予定時期

  2018年/2018年