宿敵中国を「マリオ」で迎え撃つ? 世界4位のUSJ、「ハリポタ」後のアジア最強戦略とは
大阪市のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」が開業15周年を迎えた。映画「ハリー・ポッター」をテーマとしたエリアなどの人気で、昨年の入場者は1390万人と東京ディズニーシーを抜いて世界4位に浮上。多くの訪日客を受け入れ、関西経済の牽引(けんいん)役としても存在感が増す。今年、“宣伝役”のPR大使に元プロテニス選手の松岡修造さんを起用。「リ・ボーン(生まれ変わり)」をテーマに、新アトラクションやさまざまなイベントを計画する。(藤原直樹)
堺から大阪へ
いまは絶好調のUSJだが、開園までは紆余曲折があった。もともとは現在の大阪市此花区ではなく、堺市にできるはずだった。
昭和63年頃に「ユニバーサル・スタジオ」の権利を持つ米メディア大手MCA(現コムキャスト)が日本進出を計画。新日本製鉄(現新日鉄住金)と提携し、堺市での開園を目指した。だが、ロイヤルティーなどの問題が生じて破談。代わりに大阪市が誘致に名乗りを上げた。
熱心な活動が功を奏し、平成6年にUSJの大阪進出が正式に決まった。総事業費は当初計画の3倍以上となる1600億円。7年後の13年3月にようやくオープンにこぎつけた。式典では人気俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏も駆けつけ門出を祝った。
関西依存脱却
初年度こそ入場者1102万人と盛況だったが、2年目に早くもつまずく。アトラクションで消防に届けていた火薬量を超過して使用していた問題など不祥事が相次いで入場者は急落。14年度には763万人まで落ち込んだ。
その後、入場者は800万人前後と低調に推移し、「大阪のお荷物」とまで揶揄(やゆ)されるようになった。21年には大阪市が運営会社の株式を米投資銀行に売却。親会社が代わったUSJは、外資系家庭用品大手から招いた森岡毅執行役員を中心に改革に乗り出す。ターゲットを「家族連れ」に絞り、映画テーマパークからの脱却を目指した。
まずはスヌーピーなど子供に人気のキャラクターをテーマにしたエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を建設。さらに「ワンピース」などの人気のアニメやゲームを導入した。
23年頃からUSJの入場者は回復の兆しを見せ始める。そして次の大きな挑戦が人気映画「ハリー・ポッター」をテーマにしたエリアだった。投資額は400億円。森岡氏からこの計画を聞いた経営陣は「高すぎる」と猛反発したという。
それでも森岡氏は説得を続けた。「集客の関西依存からの脱却」を目指したからだ。集客の多くを自宅から遊びに来る人に依存していたため、日本全国、さらには世界から集客できるコンテンツとしてハリー・ポッターが必要だった。
26年7月に完成したこのエリアは大成功し、関西の観光業界に多大な影響を与えた。このころからUSJが「関西経済の牽引役」とみなされるようになる。
■集客の切り札
関西依存からの脱却として次に構想したのが、まったく新しいテーマパークを沖縄に建設する計画だ。投資額は約600億円。沖縄の美しい自然と連携したリゾート施設にすることを見込んでいた。
だが、この計画は昨年11月にコムキャストがUSJの運営会社を買収したことで状況が一変する。沖縄は台風の影響が無視できないうえ、関西と比べ人口が少ない。沖縄への観光客は美しい海など自然環境を好む傾向があることなどから、コムキャストは投資に見合う集客が見込めないと採算性を疑問視した。
結局、コムキャストから派遣された新経営陣は新パーク建設を断念し、大阪のUSJに集中投資する方針を決めた。その判断の背景には、テーマパークの国際競争の激化が挙げられる。
訪日客の急増でUSJは入場者の1割を外国人が占めるようになった。今後は集客を考えるうえで海外のテーマパークもライバルになる。訪日客の中心を占める中国では今後、上海にディズニーリゾートが、北京にはユニバーサル・スタジオ北京がそれぞれオープン予定だ。
競争に打ち勝つにはUSJの魅力をさらに高める必要がある。切り札になるのが、任天堂と連携して建設する新アトラクションだ。ハリー・ポッターとほぼ同額の400億円規模を投資。「マリオ」など任天堂の人気キャラクターが登場する複数のアトラクションで構成するエリアにする。
USJはこの「日本にしかない」コンテンツを強化して海外勢との勝負に挑み、「アジア最強のコンテンツ」を目指す。
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産経新聞は、地域貢献の一環で関西学院大学に講師として記者を派遣しています。今回の記事は、5月30日に開催された同大産業研究所講演会で、経済部の藤原直樹記者が「アジア最強のコンテンツ、USJの戦略」と題して講演した内容をもとに作成しました。
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