「つながるクルマ」の開発加速 トヨタや独ボッシュなど、主導権争い激化

 
自動車部品大手の独ボッシュが日本初公開した「つながるクルマ」の試作車=8日、東京都渋谷区

 自動車業界でインターネットに常時接続する「つながるクルマ」の開発が加速している。道路状況に合わせて地図を更新したり、事故時に自動で通報したりすることで渋滞や事故被害の緩和が期待できる。トヨタ自動車や米フォード・モーターなどのメーカーに加え、車部品最大手の独ボッシュがサービスを始めるなど競争が激しくなっている。

 ボッシュが2021年の実用化を想定する試作車は、車内のディスプレーで指紋認証すると自宅や職場とネットでつながる。自動運転を使えば車内でビデオ会議ができ、自宅のインターフォンを通じて宅配便を受け取ることも可能になる。

 ボッシュは温度や圧力、傾きなどを検知する微細センサーで世界首位。車両や運転手の情報を集めることが前提のつながるクルマにも不可欠な技術だ。

 日本法人のウド・ヴォルツ社長は「センサーはすでにあらゆる車種に搭載しており、ソフトウエアの向上や公道での走行テストを進める」と話す。日本での第一歩として、事故時に自動でコールセンターにつながり通報するサービスを年内に開始する。

 トヨタは今年1月、米フォードと提携し、スマートフォンと車載通信機が接続する仕組みを共同開発することで合意した。車載パネルを使って、スマホの地図アプリなどの操作ができるようにする。トヨタは「つながることでクルマは移動手段のみならず、新たな価値を提供できる」(広報部)と話す。

 電気自動車(EV)ベンチャーの米テスラ・モーターズは昨年10月、ネットに接続してソフトを追加することで自動運転を可能にした。一方、米検索大手グーグルは車載機器の共通規格をつくる団体を立ち上げるなどIT業界も、巨大な自動車市場で存在感の確立を狙っている。

 調査会社の富士経済によると携帯端末やデータセンターなどに常時接続する乗用車は30年に累計6億8249万台となり、14年に比べて6.1倍まで拡大する見込み。乗用車全体に占める割合は55%とほぼ「標準」の装備になるため、主導権争いが過熱しそうだ。