民泊、本格市場化狙う CCC、Airbnb提携の深謀遠慮

 

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と民泊仲介サイト世界最大手の米Airbnb(エアビーアンドビー)が、日本市場の開拓で事業提携した。CCCが展開する「TSUTAYA」は全国約1500店舗を数え、共通ポイント「Tポイント」の会員数は約5900万人と日本人の半数近くにも上る。翻ってエアビーは、一般住宅に有償で客を泊める「ホームシェア(民泊)」を広めた立役者ではあるが、日本では認知度が高いと言えず、登録物件の多くが違法営業にあたるとみられている。この両社が手を結ぶ狙いはどこにあるのか。

 「こういうことを言うのは危険かも知れないが、われわれの祖業である貸しレコード業も、始めた当初は『違法』だと非難されたものだ」。CCCの増田宗昭社長は発表会見でそう述べ、既存産業の枠組みに当てはまらないエアビーとは「価値観が近い」(同)ことをアピールした。

 増田社長が出身地の大阪府枚方市に1号店を開いた1983年当時、レンタル業は著作権法などが想定していない新サービスで、レコード業界による貸与差し止め訴訟も起きていた。その後に国が「貸与権」を定め、レンタル業者が著作権者などへ使用料を支払う枠組みを整備。日本における民泊サービスも、そうしたレンタルサービスの萌芽期と同じ段階にあるというのだ。

 観光立国を掲げる政府は民泊に関し、「健全な普及」に向け、既存の旅館業法に代わる新法の制定を目指している。こうした環境変化をさして増田社長は「法律によって問題がクリアになることを期待している。新しいライフスタイルを提案していきたい」と力を込める。

 1軒の貸しレコード店から一大グループに成長したCCCだが、取り巻く経営環境は決して楽観視できるものではない。

 共通ポイントサービスでは、三菱商事系のローソンなどが展開する「Ponta(ポンタ)」や楽天の「楽天スーパーポイント」、NTTドコモの「dポイント」と会員や加盟店の獲得でしのぎを削り合う。

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 ■暮らしビジネスに「旅行」取り込み

 CD・DVDレンタルや書籍販売でも、米ネットフリックスをはじめとする動画配信大手や、米アマゾン・ドット・コムなどネット通販大手との顧客争奪戦が厳しさを増している。

 こうした中、CCCは図書館運営や格安スマートフォンなど事業の多角化を矢継ぎ早に進め、暮らしのあらゆる場面にCCCが関わるというビジネスモデルを追求してきた。今回のエアビーとの提携は、増田社長が掲げる「ライフスタイル提案」の中で「旅行」という大きなピースを埋めることになる。

 CCCが日本でのエアビーの宣伝に成功し、Tポイント会員が海外旅行する際にエアビーを優待利用できるところまで提携が深化すれば、会員を囲い込む上で強力な武器となるかもしれない。

 実は、CCCとエアビーが手を組むのは今回が初めてではない。2014年からコラボを始め、昨夏には書店を中心とした複合商業施設「湘南T-SITE」(神奈川県藤沢市)を使い、家族で店内に宿泊してもらう夏休みの特別キャンペーンを実施。応募者全員にエアビーの割引クーポンを送るなど、エアビーの知名度向上を図ってきた。そうした取り組みを経て、今回の本格提携に至ったという。

 エアビー共同創設者のジョー・ゲビアCPO(最高商品責任者)は「いろいろな国でさまざまなレベルのパートナーと組んでいるが、もともとはT-SITEとの提携が始まりだ」と、経緯を説明する。

 世界最大手とはいえ、日本での認知度が高いとはいえないエアビーのサービスを広める上で、厚い会員基盤と店舗網を持つCCCの発信力を借りるのが得策と判断したというわけだ。中長期的には「新しいサービスをCCCと共同で作り、日本の地域活性化に貢献したい」(ゲビア氏)と青写真を描く。

 では、提携がCCCにもたらすメリットは何か。増田社長は「訪日客が増えればTポイント加盟店の売り上げが増え、当社の利益にもつながる。深掘りしたプロモーションで全面支援したい」と話す。

 手始めに東京・渋谷の店舗にエアビーの特設コーナーを開き、CCCのサイトで民泊のPRを開始。「誤解されがちな民泊サービスの本質を啓発していく」(増田社長)という。今後は民泊の体験イベントや、部屋の貸し主(ホスト)として登録した人へのTポイント付与なども行う計画だ。

 「“アウトロー”同士の提携」(業界関係者)と揶揄(やゆ)する向きもあるが、数々の実績を持つ両社の提携は今後、プラスの相乗効果をもたらす可能性もある。後から振り返ると、民泊市場が本格創出されるターニングポイントだったといえる日が来るかもしれない。(山沢義徳)