「阪急を滋賀県に延伸して」「虎のフロント改革を…」 阪急阪神HD株主総会
関西を代表する私鉄2社を保有する阪急阪神ホールディングス(HD)の定時株主総会が14日、大阪市内で開かれた。株主には熱心な鉄道利用者やファンも多く、運行ダイヤ見直しをはじめ、阪急の滋賀県延伸や、新チケット導入などを要望する突っ込んだ質問が相次いだ。また、傘下のプロ野球・阪神タイガースの運営をめぐり、球団愛に満ちた意見・提案も続出。会場には沿線住民と思われる中高年女性の姿が目立ち、ユニークな質問が飛ぶと厳粛な会場が笑いに包まれるなど、人気企業らしい総会となった。(大島直之)
快速から普通まで“複雑怪奇”
鉄道の利便性向上については、長年の利用者という男性株主から「阪急の(特急、快速など)優等列車を昔のようにシンプルにしてほしい。(京都線は)快速特急から普通まで7種類もあって分かりづらく、複雑怪奇だ」との意見が出た。これについて経営側は「その時期の利用状況に応じてダイヤを作っている」と理解を求めた。
1枚の乗車券で、一定のエリア・期間内なら何度でも利用できる「ゾーンチケット」の導入を求める要望も出された。経営側は「欧州にみられるゾーンチケットは、地方自治体が運営しているケースが多い。日本のように独立採算で経営する民間会社では難しい」と釈明し、理解を求めた。
「北海道旅行」が沖縄へ
滋賀県草津市の60代男性株主からは、「(阪急京都線の)滋賀県への路線延伸を検討できないか」と思いがけない要望が飛び出した。経営側は「既存の新線計画もある。(滋賀延伸は)遠方であり、莫大な投資額が必要なため難しい」と切り返し、新たな巨額投資を否定した。
このほか、子会社の阪急交通社が実施した、行き先を伏せて募集する旅行商品「ミステリーツアー」について、「まるで行き先が北海道のようなチラシを作り、実際に行ったのは沖縄の宮古島だった。どうなっているのか」と詰め寄る珍質問もあった。経営側は「初めて聞いた。事実関係がわからないので、個別に回答する」と応じるのがやっとだった。
恒例のタイガース談議
熱狂的なファンを抱える阪神タイガースは毎年、株主総会の“主要議題”となり、今年も活発な意見が交わされた。新しく就任した金本知憲監督、掛布雅之2軍監督の采配や、若手選手の活躍に対する称賛の声が多かった。
一方、「フロント人事は既成概念にとらわれず、生え抜き以外も登用すべきだ」と、さらなる球団活性化を促す声もあった。
質問者は、タイガースのユニフォーム姿で出席したり、70年来のファンを自称したりと熱烈そのものだ。総会後に甲子園球場へナイター観戦に向かうという女性ファンは、「球場のトイレに洋式が少なく、化粧直しをする場所もない」と指摘し、球団の今年のスローガンを引用して『超変革』を要請。経営陣から「今後の改修で考慮したい」と前向きな回答を引き出すことに成功した。
原発発言で釈明
一方、関西電力が電力料金値下げを見送ったことが鉄道事業の収支に与える影響について、角和夫社長は「値下げで見込んでいた年間5億円のコスト負担減がなくなる」と厳しい見通しを示した。
その上で、自身が副会長を務める関西経済連合会の定例記者会見で、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定に触れたことを釈明した。
角社長は関経連の3月17日の記者会見で、高浜原発の運転差し止めが電力料金値下げ見送りの遠因になったことを指摘したが、それが地裁決定への批判と受け取られ、波紋を呼んでいた。
株主総会で角社長は、「決して自社の経済的利益のためだけの発言ではない。原発に賛成しているように伝わってしまい残念だ」と心情を吐露。関電が値下げを見送ったとはいえ「鉄道の運賃値上げなどで(利用者に)ご迷惑をかけることはない」と明言した。
肝心の経営は?
この日の株主総会への出席者は3882人、質問数は16人・34件にのぼった。とはいえ、質問の大半は鉄道サービスやタイガースの運営に関する内容で、投資家として企業の財務や資本政策を質す株主は一部にとどまった。特にタイガースファンにとって、阪急阪神HDの株主総会は一年に一度、球団への意見を親会社の経営陣に直接ぶつけられる貴重な機会だけに、“お祭り”のような一面もある。
裏を返せば、3時間近くに及んだ株主総会で経営陣に厳しい追及がなかったことが、阪急阪神HDの経営の順調ぶりを示しているといえるだろう。
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