加速する日本の「エレベーター競争」 東芝は再び「上昇気流」へ乗るか
ふだん何気なく乗っているエレベーターだが、その技術は日々向上している。開業したビルで実用化されているものでは、東芝が台湾に納入した分速1010メートルのエレベーターが世界最速だが、これに負けじと三菱電機は1230メートル、日立製作所も1200メートルのエレベーター技術を開発。日本の電機メーカーの「エレベーター競争」は文字通り加速している。
しかしエレベーターに求められる性能は速度だけではない。環境への配慮も重要な課題だ。
東芝は1998年に、巻上機や制御装置をコンパクト化して昇降路内に設置した国産初のマシンルーム(機械室)レス・エレベーター「スペーセル」を発売した。屋上機械室が不要となり、建物の設計をより自由にできるほか、その後も高性能化を進め、「賢い」「やさしい」エレベーターを追求してきた。
省エネ・環境性能に優れた2012年発売の「スペーセル-GR」の後継機種として、今年1月に発売した最新機種「スペーセル-GRII」は最先端の画像解析技術を搭載。エレベーターに近づく人が乗りたいのか、それとも通り過ぎるのかを自動的に判断し、ドアの開閉を行えるようになった。無駄な停車時間を減らせるため、運転効率の向上や省エネが期待できる。
エレベーターのカゴと乗り場の間に生じる隙間をふさぐ機能も業界で初めて追加。女性がイヤリングなど小さな物をすき間の中に落としたり、ハイヒールがひっかかったりするようなリスクを防ぐことができるようになった。
さらに、車いすの人には欠かせないカゴ内の背面ミラーの中にモニターを搭載し、映像が浮かぶサイネージ(看板)として室内の装飾などもできる「ミラーサイネージ」、カゴ内の操作盤にある液晶ディスプレーに日本語、英語、中国語、韓国語で表示し、運行状況を伝える「ユニバーサルガイド」といった機能も加えた。20年東京五輪・パラリンピックで増加が見込める訪日観光客にも配慮している。
消費電力50%削減
省エネの面でも回生電力の利用や待機電力の削減、LED(発光ダイオード)照明の採用などで、消費電力を従来機種に比べ最大50%も削減した。カゴをガイドレールに沿って動かすのにローラーを使用しており、従来は必要だった潤滑油を使わずに済み、省資源も実現した。
東芝は、昨年発覚した不正会計問題で信用が急降下した。医療機器や白物家電事業の売却に追い込まれ、大規模なリストラも実施した。こうした中、「従業員のモチベーションも低下してしまった」(実平喜好環境室長)という。
環境配慮型の商品や環境保全活動を紹介するために1989年から続けてきた「東芝グループ環境展」も、今年は開催見送りも検討したというが、環境活動の担当役員も務めた経験がある室町正志社長がゴーサインを出し、今月9、10日に開催した。「GRII」の技術も紹介され、来場者の注目を集めた。
エレベーターなどの社会インフラ事業は、エネルギー、半導体と並ぶ東芝の新たな成長の柱として期待されている。
今年は東芝にとって、66年の昇降機事業開始から50周年にあたる。「GRII」はその記念モデルとして位置付けられ、販売目標は年間約5000台だ。
マシンルームレス・エレベーターは、業界トップの主要環境性能を持つ製品群「エクセレントECP」の中にも含まれる。東芝を再び「上昇気流」へと乗せられるか。(宇野貴文)
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