「取締役がこれほど多く入れ替わるのは異常」

大戸屋株主総会詳報(下)
大戸屋ホールディングスの株主総会に向かう株主ら=23日午前、東京都内のホテル

 新体制の説明求める株主

 株主からも、この点に関して説明を求める質問が相次いだ。

 ある女性株主からは「前会長が急逝し、残された取締役が遺志を継いで会社を発展させるのが普通ではないか。5人も取締役が退任するのは、一致団結からはほど遠い」と心配する声があがった。また、別の男性株主は「取締役がこれほど多く入れ替わるのは通常ではない。ガバナンスが不足している」と指摘すると、会場からは大きな拍手がわき上がった。

 これに対し、窪田社長は「社外取締役に関しては任期満了ということもあり、交代する。決して一致団結していないわけではない」などと、釈明に追われた。

 創業家は、かつて取締役だった3人が復帰することに疑問を抱いている。なかでも河合氏はかつて会長を務め、平成22年まで取締役だった。株主からも「河合氏が取締役で戻ってくるのは、相当会社が危ないということか」との声が上がった。河合氏は三菱UFJ信託銀行出身。窪田社長は河合氏の復帰について「大戸屋との関係は非常に長く、ビジネスの経験と人脈が事業発展にプラスになると考え復帰してもらう」と理解を求めた。

 社外取締役には久実氏の兄である教雄氏が選ばれた。だが、教雄氏は医師で会社経営の経験はなく、外食産業に身を置いたこともない。このため、株主からは「取締役にフードサービスの経験がない人が多い」などと懸念する声があがった。これに対し窪田社長は「教雄氏は消化器系の医師。食の安全・安心に取り組むにあたって知識を社内に取り入れてもらいたい」などと説明した。

 また、会社側は久実氏が設立を後押しした中国子会社について、赤字が続いていたことを理由に今年に入り精算。同じく山梨県の植物工場からも撤退するなど、久実氏が築いた路線から距離を置き始めた印象を与えかねない。これについて、株主からは「収益にすぐにつながらないからやめるのか」などと、会社の方針に不満の声が漏れた。

 沈黙を通した創業家

 創業家の智仁氏はこれまでの産経新聞の取材に対し「会社側の提案では社外取締役3人全員を入れ替えるほか、以前取締役を務めていた3人が再び取締役に選任されるなど疑問がある」とし、会社側の人事案に反対した。その一方で「会社側と話し合いを持ちたい」とも語っていた。

 ところが、23日の総会で創業家から質問や動議はなく、沈黙を押し通した。これに対し窪田社長は「創業家に理解してもらえるよう対処していきたいが、まだ、(創業家から)直接、正式な申し出がない状況だ」と述べ、戸惑いを隠さなかった。

 株主総会は新任取締役候補が挨拶することもなく、80分ほどで終了。新体制の成長戦略について説明を尽くしたとは言い難い。総会後の株主からは「新任取締役が意気込みを語ることもなく、正直がっかりした」(三重県鈴鹿市の女性株主)との声が聞かれた。

 創業者が亡くなった後の新体制が業績を伸ばせなければ、株主からの不満が噴出する恐れがある。

 業績に陰りが見えれば次回以降の総会で、創業家が独自の人事案を株主提案する可能性も否定できない。今回の総会では会社側の人事案が可決され一応の決着をみたが、“お家騒動”が長引く懸念はくすぶったままだ。