出光創業家の反対で“国策崩壊” どうなる昭和シェルとの合併、業界に衝撃
出光興産(右)と昭和シェル石油のガソリンスタンドの看板
出光興産は創業家による反対表明で、昭和シェル石油との合併計画が破綻する危機に陥った。原油価格の下落傾向やガソリン販売の低迷で、石油需要は先細りが予想される。再編の構図が崩れると元売り業界の競争力強化には打撃で、国の資源政策にも影響する可能性がある。
資源を持たず、製造業が経済を支える日本にとって、石油などの確保は死活問題だ。石油元売りは原油の権益獲得などで産業に必要なエネルギーを確保する役割も担ってきた。
だがハイブリッド車の普及に代表されるように省エネ意識が行き渡り、原油価格は低迷し、元売り各社は経営体力を低下させている。資源確保という国益を損なう恐れもあり、業界再編は経済産業省の悲願だった。
そんな国策を、創業家が打ち砕こうとしている。最近では創業家と経営陣の対立が目についており、定食チェーンの大戸屋ホールディングスで創業家が現経営体制に反旗を翻した。セブン&アイ・ホールディングスでカリスマ経営者だった鈴木敏文氏も創業家との対立で退任に追い込まれており、経営を左右する問題になっている。
資本主義の原則に照らせば、企業は株主のものだ。一方で、企業の社会的な責任が重視されるようにもなり、私企業にも公的な面がある。企業は誰のものか、という根本的な問題を今回の問題は突き付けているようにも見える。
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