関西ホテルが狙う“二匹目のドジョウ” イチゴに続け…初夏のスイーツ食べ放題

 
ホテルニューオータニ大阪では最高1500円程度の高級ショートケーキを小さめのサイズに、色んな味を楽しめる=6月3日、大阪市中央区(田村慶子撮影)

 イチゴを好きなだけ食べられる「イチゴブッフェ」がこの春、関西のホテルで一大ブームとなったことから、各社がメロンやマンゴーといった夏ならではの果物を使った新企画、店内装飾などで“二匹目のドジョウ”を狙っている。背景には、2兆円を超えるとされる国内スイーツ市場の成長があるが、ホテルには若い女性やカップル客が多く訪れるため、宿泊や婚礼利用などへの呼び水としても期待が高まっている。(田村慶子)

 この夏はメロン、マンゴーが食べ放題

 「キラーコンテンツのイチゴに及ぶにはまだまだ。それでも5月に始めた新企画で週末は満席になる人気なので、スイーツの食べ放題は夏、秋と続けます」

 イチゴに続くスイーツ企画への意気込みをこう話すのは、ホテルニューオータニ大阪(大阪市中央区)の広報担当者。5月7日にスタートさせたスイーツ食べ放題の新企画では、マスクメロンや和三盆を使った館内で買えば1個1500円(税別)もする高級ショートケーキ、サンドイッチなどをそろえた。

 同ホテルはイチゴブッフェ企画「ホテルでいちご狩り」で今年1~4月、約2万5千人と前年同期比4割増を集客した。こうした人気を受け、季節ごとに品を変えることで通年企画に拡大させる狙いだ。この秋には会場となる1階ラウンジに専用キッチンを設けるなど、スイーツ企画仕様に施設改装も計画している。

 関西のホテルはイチゴブッフェのブームを次につなげようと、5月から相次ぎスイーツの食べ放題を始めている。

 今春、ヒルトン大阪(同市北区)はイチゴの食べ放題企画で当初計画の3倍の集客に成功。5月16日には初夏の新緑をイメージしたメロンや青リンゴなどのスイーツを集めたシリーズ企画を打ち出した。また、イチゴブッフェで2万8千人超が利用したザ・リッツ・カールトン大阪(同)も同じ日、「マンゴーを味わい尽くす」をテーマに、“マンゴーブッフェ”を登場させ、宿泊と合わせたプランも投入して客単価の伸びも図る。

 日本人はスイーツ好き

 ホテルでスイーツの食べ放題企画が春に成功したのは、品種が急増しブランド化したイチゴの商品価値の高まりがあるが、国内で底堅く成長するスイーツ市場の存在も大きい。景気回復の兆しが個人消費につながらないといわれながらも、日本国民はスイーツが好きなのだ。

 今年1月に民間調査会社の矢野経済研究所が発表した「和洋菓子・デザート類市場に関する調査結果」で、平成27年度は前年比1・1%増の2兆1634億円と予測。近年は消費税増税などの影響でわずかな浮き沈みはあるものの、5年前の22年からは1千億円以上伸びている。

 さらにホテルが近年、食べ放題企画にさまざまな工夫を凝らすようになったことも、消費の刺激につながっている。

 ほぼ全てのホテルが、スイーツの食べ放題にサンドイッチやピザ、サラダなどの軽食メニューも投入。割高感のあったスイーツのみの構成を見直したことで、間食でなく3食の延長線としてとらえられるようになり、中心価格帯が4千~5千円台と決して安くない食べ放題企画の販売を押し上げた。

 マリー・アントワネットを連想させる演出も

 さらに、店内の装飾や料理の見た目に対するこだわりも際立つ。場の楽しさを演出するのはもちろん、新規客の獲得に欠かせない宣伝ツール、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への拡散も狙っているためだ。

 5月20日に始まったセントレジスホテル大阪(同市中央区)の企画では、“お姫様”をテーマに白雪姫の毒リンゴをイメージしたムース、マリー・アントワネットを連想させるマカロンなどを提供している。「女性が胸をときめかせる空間を」と、女性スタッフはメイド風の制服をまとうなど演出を徹底。20、30代の女性客らが着飾り、携帯電話で写真を撮り合っている。

 一方、ホテルグランヴィア京都(京都市下京区)も5月1日、メロンのスイーツを中心にしたブッフェ企画を開始。エディブルフラワー(食用花)を使ったケーキやゼリーで華やかさを演出した。

 各ホテルともこうした企画の主要客は、若い女性やカップルだ。女子会やデートに多く使われており「食べるだけでなく、楽しさの要素が重要」と、ホテルニューオータニ大阪の高山剛和副総支配人は話す。それだけでなく「スイーツブッフェをきっかけに、他のレストランや宿泊、婚礼の利用につながるとの期待も高い」という。

 国内のホテル利用は長らく中高年層がメーンだったため、業界では若年層の取り込みが喫緊の課題になっている。長く使い続けてくれる「ロイヤル・カスタマー」を育てる入り口としての期待が、スイーツの食べ放題企画をさらに進化させそうだ。