潤沢マネー借り手なく 設備投資に慎重 「まだ金利下がる」期待も

 

 日銀の市場への潤沢な資金供給が、銀行の貸し出しに結びつかない状況が続いている。日銀が8日発表した6月の貸出・預金動向(速報)は、国内銀行の月中平均の貸出残高が前年同月比2・0%増の432兆5147億円にとどまった。マイナス金利政策の導入で貸出金利が低下したにもかかわらず、水準は上向いていない。市場は追加の金融緩和を期待する一方、経済の好循環を狙った金融政策の限界をより意識し始めた。

 貸出残高の内訳をみると、都銀の伸び率が0・6%増(前月は0・9%増)、地銀・第二地銀は3・3%増(3・4%増)といずれも鈍化した。このうち都銀の伸びは平成25年1月以来の低い水準だった。日銀は都銀の貸し出し状況について、「為替市場の円高進行で外貨建て貸し出しが円換算で減少した影響もある」と分析するが、マイナス金利政策導入前の1月の伸びが都銀で1・1%だったことを踏まえると、低水準にとどまっているといえる。

 背景には、企業の内部留保が潤沢で金融機関に頼らずに設備投資ができるといった理由もあるが、「景気の先行き不安が依然として拭えず、企業が投資に慎重姿勢を崩していない」(証券アナリスト)との見方が根強い。

 また、大手銀の担当者は「金利がもっと下がるとの期待から、企業は設備更新などを後回しにするケースもある」と指摘する。伸びているとされる不動産向け融資も、都心部への一極集中が続き、人口減少が見込まれる地方には波及していない。

 こうした中、日銀は市場に出回る資金を増やし続けている。6月のマネタリーベース(資金供給量)の月末残高は初めて400兆円を超え、403兆円となった。年80兆円のペースで資金供給量を増やしている金融緩和の影響だが、市場では「マイナス金利を深掘りしても、資金需要は伸びない」との声が出ている。

 円安株高によって大企業が得た利益が設備投資や賃上げに回り、中小企業や地方にも波及する「経済の好循環」を狙ったはずの金融政策が、袋小路に入り込みつつある。(飯田耕司)