“爆買いバブル”崩壊…ネット直販移行 イオン、マツキヨ、キリン堂…乱戦模様
中国でネット通販市場が拡大する中、大衆薬や日用品の「爆買い」を取り込む新たな手段として、国内メーカー各社が中国でインターネットサイトを開設し、日本から製品を販売する直販に乗り出す動きが相次いでいる。中国では若者を中心に、ネット上での購入が今後も拡大するとみられ、国内メーカーにとっては収益アップの切り札としても期待される。一方で、大手ドラッグストアなど小売店も独自に中国向けのネット通販を先行して展開しており、メーカー各社は“競合”も見据え、販路としてどの程度伸ばせるのか手探りの状態だ。(阿部佐知子)
越境ECに進出するメーカー
日本メーカーの参入が相次いでいるのは、インターネット通販サイトを通じて日本から中国の消費者に向けて商品を販売する、国際的な電子商取引「越境電子商取引(EC)」と呼ばれる仕組みだ。
中国では生活水準の向上などで海外製品の人気が高まっており、日本製品などを購入することができる越境ECサイトでは、最大手のアリババ集団「天猫国際(Tモール・グローバル)」や京東集団の「京東全球購(JDワールドワイド)」などが売り上げを伸ばしている。
企業側にしてみれば、現地に販売の拠点や銀行口座などがなくても出店できるなど、中国進出のハードルが低い。そして特に近年、日用品や化粧品は訪日外国人客の「爆買い」商品の象徴になるなど人気が高く、メーカーもメリットを期待して続々と越境ECに進出しているわけだ。
このうち花王は、昨年11月に天猫国際、今年5月には京東全球購に進出し、子供用おむつの「メリーズ」を発売。メリーズは中国でも販売しているが、日本の商品を中国での転売目的で買い占めるケースが後を絶たなかった。同社担当者は「メーカーとして販売することで、ブランドの信頼感を保てる」などと話す。
また、冷却剤「熱さまシート」などが中国人観光客に人気の高い小林製薬も5月に「天猫国際」にサイトを開設。「熱さまシート」のほかにも、口臭防止剤「ブレスケア」なども販売する。
ライオンは、サプリメントを皮切りに、洗剤などの日用品の販売も始めた。
成長市場に注目するのは小売りや卸売りも
経済産業省が5月に発表した報告書では、中国国内で越境ECサイトの利用者は、現在1800万人にのぼっているという。
また日本からの製品の購入額は、2014年に6064億円だったが、18年には1兆3943億円にまで伸びると予想されるなど、メーカーにとっては見逃せない市場だ。
一方で、越境ECに商機を見いだそうとしているのは、メーカーだけではない。
イオンリテールは今年2月、天猫国際で自社ブランド製品の他、大手メーカーの化粧品や日用品の販売を始めた。マツモトキヨシやキリン堂といった大手ドラッグストアチェーンも、売り上げ拡大に力を入れている。
メーカーが直接参入して直販を行うことは、日本国内で取引関係にある小売店などと競合する可能性もある。
実際、多くの人気商品を抱えて売り上げが期待できるメーカーも、まずは商品数を少なめにスタートさせたり、とりあえずはどんな商品が売れるかなどのリサーチを中心に越境ECを利用したりするケースが多い。
今はおむつの販売のみにとどまっている花王の担当者は「商品のラインアップに拡大するかは慎重に検討している」と話す。また小林製薬の担当者は「販売を拡大していきたい気持ちはあるが、現在はどのような商品が人気があるかリサーチなどをメーンに利用している」という。それでも、「流通業者とは国内での付き合いがあるので、刺激しないようなやり方が必要だ」(あるメーカーの担当者)と本音を漏らす声は決して少なくない。
ただ、中国に向けたネット市場を狙うのは、日本のメーカーだけではない。米国はすでに越境ECを通じて日本のメーカーなどを上回る6290億円を売り上げている。今後もECサイト上での競争は激しくなるとみられ、海外メーカーとの競争を考えれば、売り上げ拡大のためにはうかうかしていられないのが現状だ。
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