セブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文名誉顧問一問一答(下)「後継者のことは考えていた。変化を読み取れる人だ」「資本と経営の分離は当たり前」
--経営者としてやり残したことは
「言えばきりがない。常に挑戦するのが経営者だ。私がやっていれば、また新しいものに挑戦していただろうが、何をやるかはそのときでないとわからない」
--グループトップだった24年間、後継者の育成や退任について考えたことは
「それはあった。70歳を過ぎれば後継者のことは考えていた。そういう質問も記者の皆さんから遠回しに受けていたがすぐに答える問題じゃないから、『いずれ誰かがやるでしょう』といった形で答えていた。常に後継者は誰にしようかというのは考えていた」
「一番の条件は変化を読み取ることができる人。そういう素質がないと特にセブン-イレブンのような小さい店を毎年伸ばすことは難しい。真面目だからいいとかではない」
--結局なかなか見つからなかったのではないか
「毎日の仕事を続けている中でも、突然急死したら後はどうしようかとかは考える。そういうこともありうるし、そういう経営者もいる。そうなったら後を誰かがやらないといけない。そういうことがあり得ると常に考えていた。ただ、そうなったときには誰かがやってくれるとも思っていた。誰かに辞めろといわれたわけではないが、今回はある意味で辞めるチャンスだと思って退いた」
--辞任時に名誉顧問にも就かず全部退く選択肢もあった
「4月7日の記者会見で後継者をどうするという質問に対して、『私は決めません、一切引きます』と答えたのは本当の正直な自分の考えだった。その後、メーカーの方や全国1万8000店のオーナーさん、社内からも名前だけでいいから残ってくれという声が出てきた。顧問だったら残るよということで、名誉顧問を引き受けるまで2カ月もかかった。一切引いたほうが自分でも未練も残らないし、いいだろうとも思ったが、確かに自分が始めたものを自分の都合だけで辞めるのは、ある意味では潔いようだけどどうかなとも感じていた」
--長年続けていた新商品の試食は続けるのか
「今も続けているが、商品をこう作れと言うようなことは言わない。『僕はこう思う』とか、『僕はこの味はいいと思わないけど』とかは言うが、判断するのは現在の担当者だ」
--個人消費が低迷しているが感覚としては
「モノが豊富にあっても人間は常に新しいモノを求めている。食べものや着るものであったり、スマートフォンであったり、いろいろだ。いずれにしても新しいものを出していけばいい。過去の経済政策をそのまま続けたってダメだ。要するに個人消費が生まれるような政策にしないといけない。金利を下げれば、資金が投資に向かうというけれど、投資したってリターンがなければ、投資をしない」
--出光興産など、創業家と経営陣の問題が目立つ
「資本と経営は分離しないといけないのは当たり前のことだ。批判するのは簡単だが、ただ、その過程にはいろいろあるし、各社ごとに個別の事情がある」
--商品をヒットさせ続けるのは難しい
「もっとおいしいなという風に感じてもらえば消費者は離れない。矛盾すると感じるかもしれないが、おいしいモノは一番飽きるから、おいしいモノほど変えていかないといけない。例えば、いい料理屋に行って、毎日同じ料理を食べろといわれたら、どんなにおいしいとしても飽きるでしょう」
--店舗とインターネット通販を融合するオムニチャネルは
「例えば飛行機とか自動車をコンビニで売ったっていい。コンビニに陳列できるものだけしか売ってはいけないわけではない。それからもう一方で、コンビニを通すことで商品開発をする。自分たちの店頭だけでは売れなくても、新しい商品を開発して、それがインターネット通販で売れるようにする。それがオムニチャネルなんです」
「簡単なことじゃない。でもみんな簡単なことじゃないから、そんなことを言ったってといって反対する。1つのものを作るのは一瞬の思いつきでぱっと作れるものもあるが、そんなものは少ない。こうしたサービスがあればという仮説を設けて、どこまで行けば利益を生み出すかは分かる」
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