シャープに不安感じる消費者 ロングランCM、吉永小百合「続投」のワケ

 
シャープ2016夏モデル新作発表会で新商品の「スマートフォンAQUOS(アクオス)」のPRを行うフリーアナウンサーの加藤綾子さん=6月2日、東京都港区(早坂洋祐撮影)

 台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下で経営再建を目指すシャープが、テレビCMなどを駆使してブランドイメージの再構築に乗り出している。和服姿の落ち着いたたたずまいで液晶テレビ時代の幕開けを強く印象付けた女優の吉永小百合さんは、白物家電CMでロングラン登板。加えて液晶テレビCMにはきゃりーぱみゅぱみゅさん、携帯電話にはフリーアナウンサーのカトパンこと加藤綾子さんを起用した。消費者モニター調査で「買いたくない」が3割を超えたシャープ。華やかなCMの裏では、今後の品質やサービスに対する消費者の不安を払拭(ふっしょく)する狙いもありそうだ。(石川有紀)

 液晶からAIへ

 きりっとアナウンサーの仕事をこなす加藤さんが帰宅後にほっと一息つくと、スマートフォンが「今日もグッジョブ(Good job)でしたね」とねぎらう。

 6月から全国で放映しているテレビCMは、液晶画面の美しさで差別化してきた「アクオスケータイ」のブランドイメージをあえて外し、独自の人工知能「エモパー」の対話機能を際立たせた。フリーアナウンサーとして新たなスタートを切った加藤さんの一日を追うドラマ仕立てのCMには、シャープの家電製品もちりばめ「新生シャープ」の始まりを予感させる。

 シャープは人工知能(AI)やセンサー、音声認識などの技術を用い、人の気持ちを察知して生活に寄り添う家電製品を世に送り出す「ココロプロジェクト」を平成27年から展開。目玉技術のひとつであるエモパーは、例えば位置情報から帰宅を察知して「お疲れさま、今日は遅かったですね」とねぎらったり、スケジュールを前もって知らせたりと、機械側から人の様子を察知して話しかける。米アップルなど海外勢のスマホの質問に答えるタイプの対話機能よりも自然な会話を目指し、「親しみやすさ」で対抗するねらいだ。

 吉永さん「続投」

 シャープブランド戦略部によると、広告宣伝費は液晶テレビ最盛期の20年に比べ、経営危機が始まった24年以降は半分以下までに激減した。それでも消費者向けCMは減らさずに、テレビの提供番組や都市部の看板を減らすなど固定費を削減してやりくりしてきたという。

 新たな「顔」として、きゃりーぱみゅぱみゅさんやカトパンを起用し話題を集める一方、中高年に人気が高い女優の吉永小百合さんが「続投」している豪華布陣は、今年6月の株主総会でも話題になった。

 平成12年、和服姿でブラウン管テレビを風呂敷に包み、「21世紀に持って行くもの」と液晶テレビを紹介するCMで話題を呼んだ吉永さん。液晶テレビのCMは27年にきゃりーさんに交代したが、今も冷蔵庫やエアコンなど白物家電のCMには出演している。株主に「熱烈なファンだった当時の経営トップの影響か」と問われた高橋興三社長は苦笑いを浮かべて否定しながら、「シニア世代の絶大な人気」が理由と説明した。高価格帯の家電の購入層であるシニアの支持が厚い吉永さんに、変わらぬ製品への信頼感を託しているようだ。

 新聞にも広告「家族で読んでほしい」

 しかし、日本の大手家電メーカーとして初めて直面する「外資買収」に、消費者心理も揺れている。シャープが4月に消費者モニター調査を行った結果、「今後も製品を購入したいと思うか」との設問に計3割が「思わない」「あまり思わない」と回答。4割が「わからない」と答えた。販売の現場には、長く使う家電だけに品質や技術、サービス、製造国などが変わるのでは…といった消費者の声も届いており、不安払拭が大きな課題として浮上した。

 「シャープは、これからもシャープです」

 5月下旬、こんな見出しの全面広告を全国紙と全国の地方紙に出した。「家族で読んでほしい」と週末を選んで掲載したという。華やかなテレビCMとは別に、こうした消費者への丁寧な説明を続けることでブランドイメージ回復をめざすという。

 親会社となる鴻海は、出資する3888億円のうち約265億円を国内外のブランド戦略と新事業研究開発などに投じるとしている。全社的なコストカットがすでに進んでおり先行きも不透明だが、新生シャープが消費者の信頼を獲得できるか、ブランド再構築の行方に注目したい。