東武鉄道の「SL計画」着々、来夏に出発進行 スカイツリーから“本業へ回帰”
東武鉄道がJR北海道から借り受ける蒸気機関車(SL)「C11形」が19日、東武の車両所に到着した。来夏から栃木県日光市の鬼怒川線下今市駅-鬼怒川温泉駅間約12キロを年間140日程度走らせる予定。東京スカイツリーへの巨額投資が一段落したことから、東武は昭和41年の廃止以来、半世紀ぶりとなるSLの復活で沿線の価値向上を図り、本業の鉄道ビジネスを強化する考えだ。(山沢義徳)
関東有数の観光地である日光・鬼怒川は、東武にとっての“ドル箱路線”。昭和30年代には新型車両を相次ぎ投入し、当時の国鉄と激しい集客合戦を繰り広げた。
しかしレジャーの多様化に伴い、鬼怒川温泉の集客数は右肩下がりが続く。また、世界遺産登録を追い風に観光客が途切れない日光でも、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)を使って車で訪れるケースが増えつつあるという。
東武は今年度まで3年間の中期経営計画で、「日光・鬼怒川地区などの活力創出」を重要課題に掲げた。SL復活の狙いは、日光への客足を鬼怒川にも向かわせると同時に、車でなく鉄道で訪れてもらうことだ。
スカイツリーの建設費として約1400億円を投じた東武は、平成23年の有利子負債が8509億円に膨らんだ。だがスカイツリー開業後は、今年6月末時点の有利子負債が約8200億円と改善している。
東武はSLの運行に先立ち、27年ぶりに新造する特急電車「500系」を来春投入する。運行拠点となる下今市駅を昭和レトロ調に改築するほか、SLを間近で見学できるエリアも整備するなど集客態勢を整える。
現在、国内でSLを運行している鉄道会社7社の大半が東武を支援する。東武の機関士や整備担当の検修員ら十数人は、JR北海道と秩父鉄道、大井川鉄道、真岡鉄道で実地訓練を受けている。
また、SLの牽引(けんいん)力を補うため列車を後ろから押すディーゼル機関車や客車などは、JR西日本とJR東日本、JR四国、JR貨物が譲渡する。終着駅でSLを方向転換する転車台(ターンテーブル)は、JR西が長門市駅(山口県)と三次駅(広島県)の2基を譲渡した。
日本で初めて、昭和51年にSLの動態保存を始めた大井川鉄道は「SL運転文化が日本全体へ広まるよう、他社への技術伝承にも前向きに取り組みたい」という。北関東地域に集中するSL運行路線は、訪日外国人客を呼び込む新たな魅力ともなりそうだ。
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