ホンダ・八郷社長「夢追いかける精神が浸透」「30年先のモビリティーを」
リーダーの素顔国内2位の自動車大手ホンダの社長に就任して1年が経過した。昨年6月の就任時は取締役を経ていない異例の抜擢(ばってき)として話題を呼んだ。世界販売600万台の目標を白紙に戻すなど逆風が吹く中での船出だったが、社内一丸で夢を追求する「チームホンダ」の精神も浸透。新たな成長への挑戦が続いている。
--就任時に掲げた「チームホンダ」の実現に向けた手応えは
「部門を超えて一つの目標に立ち向かうのがホンダらしさです。就任後に現場を回って対話し、各生産拠点で購買や生産、販売が一体感を持ってどうやっていい製品をつくるかを真剣に議論しているのを実感しました。世界を(北米、アジアなど)6地域に分ける体制の中で調整が多くなるなどの課題がありましたが、対話を通してチームホンダが浸透してきていると思います」
--「ホンダらしいチャレンジング(挑戦的)な商品」の開発も掲げています
「ここ数年も軽自動車でも自転車が積める『N-BOX』などを出し、挑戦精神が衰えたとは思っていません。ただ、日本の軽など地域専用モデルに考えが集中していました。次は中型車『シビック』、スポーツ用多目的車(SUV)『CR-V』など世界展開するモデルの商品力を高め、地域専用モデルとの両輪でラインアップを強化します」
--自動運転やカーシェアリングの登場でクルマとの付き合い方は変わるのか
「かつては運転が楽しく、どんなクルマに乗るかが自己PRにもなっていましたが、今はその楽しさや身近さが薄れていると感じています。インターネットなどで買い物などを済ませて外出しない社会にならないように、もっと移動が楽しく、自己PRできるクルマをつくりたい。自動運転も気持ちの良い山道は自分で運転できるよう選べないと、クルマが公共交通機関になってしまいます」
--30年前に研究を始めた小型ジェットやロボット技術が昨年から実用化している
「小型ジェット『ホンダジェット』は昨年12月に納入を始め、ロボット技術を生かした歩行訓練機器『歩行アシスト』も実用化しました。入社4年目から見てきて、やっぱりホンダは夢を追い続けるところだなと思いました。まずはこれらの事業を継続して成長させる道筋を付け、30年先の変化に先駆けたモビリティー(移動手段)を考えていきます」
--最近は三菱自動車の燃費データ不正問題などがあり、業界に厳しい目が注がれています
「顧客に迷惑をかけない誠意のある商品作りをすることが重要です。法律を守るのは大前提で、ホンダは研究所が開発した商品を第三者がチェックしてから量産する仕組みを採っています。基本理念の『造る』『売る』『買う』という3つの喜びを現場が常々考えるように経営として発信していきたいと思います」(会田聡)
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【プロフィル】八郷隆弘
はちごう・たかひろ 武蔵工業大(現・東京都市大)卒。1982年ホンダ入社。生産本部鈴鹿製作所長、研究開発子会社の本田技術研究所の米国法人上級副社長や、欧州法人社長、ホンダの中国生産統括責任者、常務執行役員などを経て2015年6月から現職。57歳。神奈川県出身。
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≪DATA≫
【愛車】昨年12月に750台限定で国内販売したスポーツ車「シビック タイプR」を購入しようと考えたが、10倍以上の受注があり顧客を優先した。代わりにスポーツ軽自動車「S660」に乗っている。排気量250ccのバイク「VTR」も持つ。「週末は早起きして土曜日はS660、日曜日はVTRで峠を走るのが楽しみです」
【趣味】「中学生のころからプラモデルが好きで、戦車や飛行機をつくっていました。入社後はクルマになり、最近もF1のマクラーレン・ホンダ車のプラモを購入しました」
【海外駐在】「米国で赴任したロサンゼルスは、気候が良くて道路もまっすぐでドライブやゴルフを楽しみました。逆に英国は地形に合わせて道が曲がりくねっている。小気味よく走る軽量スポーツ車の魅力を知りました。中国は広州市にいましたが、人々の向上心が強かった。いずれも一緒に働いた人が『また一緒にがんばりましょう』と言ってくれるのがうれしい」
【本社】東京・青山の本社勤務は昨年4月からが初めて。「社員に周辺のおいしい料理屋などを聞いてコミュニケーションをとっています」
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