自動車は厳しい交渉に 円高で業績悪化 「働き方改革」、下請けの待遇改善も課題に

29年春闘
記者会見する自動車総連の相原康伸会長=2016年9月29日、東京都港区赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京(会田聡撮影)

 自動車総連の相原康伸会長は29日、平成29年の春闘に向け基本方針の策定作業に入ったことを明らかにした。従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)を4年連続で要求するかが焦点となる。ただ自動車各社の業績は急速な円高進行で大幅に悪化。さらに、経営側は政府が掲げる「働き方改革」や下請け企業の取引条件の改善に重点を置く姿勢を示しており、例年以上に厳しい交渉となることが予想される。(今井裕治)

 相原会長は同日の記者会見で、基本方針策定に向け「経済動向などの情勢をよく見極めたい」と述べ、ベアを要求するかどうかについては言及しなかった。

 賃上げの“旗振り”である自動車業界の労働組合の中央団体トップが慎重な物言いにとどめたのは、取り巻く環境が28年春闘と様変わりしているからだ。

 28年春闘では、円安による業績改善や、安倍晋三首相が率先して経済界に賃上げを働きかける「官製春闘」の定着などで、3年連続のベアを実現した。しかし、今年は円高の進行で自動車各社の業績が悪化。大手7社の28年4~6月期の連結最終損益は6社が減益または赤字となった。

 とりわけ、春闘相場のリード役となるトヨタ自動車は影響が大きい。8月に29年3月期の連結業績予想を下方修正し、営業利益を当初見通しから1千億円下げ、前期比43・9%減の1兆6千億円とした。

 トヨタの労組は、過去最高業績となった28年春闘でベアに相当する賃金改善分として月額3千円を要求。経営側は世界経済の先行き懸念などを示し、27年の4千円を大幅に下回る1500円で決着した。こうした経緯もあるだけに、29年春闘でベアを要求しても、大幅減益の中、より厳しい交渉となるのは必至だ。

 懸案は業績悪化にとどまらない。経団連は、安倍政権が取り組む長時間労働是正など「働き方改革」への対応に、賃上げより重きを置く方針を示す。政府は自動車業界に対して下請け企業との取引条件の改善を求めており、賃上げの原資が商習慣の是正に振り向けられる可能性もある。