審査、想定以上の長期化 手続きの迅速化は進まず

玄海原発に「合格証」

 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)が9日、原子力規制委員会の安全審査に事実上、合格した。九電は、一日も早い再稼働を目指すが、これまでの例を見ると、事実上の合格である審査書案了承から再稼働まで1年以上かかっており、玄海再稼働も年度内は難しい。審査が想定以上に長期化しており、電力の安定供給などエネルギー問題の解決は、道半ばといえる。

 「やっとここまでたどり着いた。再稼働まで時間がかかるだろうが、今後の手続きがスムーズにいけば、という思いでいる。町民の理解を得て、年明けには同意について判断したい」

 玄海町の岸本英雄町長は胸をなで下ろした。

 同町旅館組合の組合長で、民宿と飲食店を経営する溝上孝利氏(58)も「地元の旅館は、九電さんや電力関係者がいてこそ成り立つ。今後は(定期検査などで)間違いなくお客さんが入る点で安心だ。ただ、再稼働が見通せない時期が続き、原発だけに頼らない努力も必要だと分かった」と語った。

 玄海3号機は前回の定期検査に入った平成22年12月から約6年、4号機は23年12月から約5年、運転を停止している。再稼働の前提となる安全審査が、遅々として進まなかったからだ。

 東京電力福島第1原発事故を受け、規制委は原発の新基準を設けた。九電は基準に基づき25年7月、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と玄海原発の安全審査を申請した。それから3年4カ月が経つ。

 川内1号機は26年7月に事実上の合格を果たし、昨年8月に再稼働した。審査から再稼働までの「ひな型」ができ、九電など電力会社は、他の原発の審査が迅速化すると期待した。

 しかし、審査の遅滞は想定をはるかに超えた。

 審査書案の了承から再稼働までの期間をみても、川内原発1号機の1年1カ月に対し、後続の関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町、停止中)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)は、ほぼ変わらない。審査の実績や知見が、スピードアップに生かされていないといえる。

 規制委は、大規模地震や津波、竜巻、火山噴火など自然災害や事故について、安全が保てるか審査し、それぞれ対策を求める。

 規制委の指摘を受け、九電が提出した書類は、申請当初の約1400ページから約9800ページに増加した。

 「審査の中でわれわれは、まな板の上のコイ」(九電の瓜生道明社長)。独立性の高い規制委、そして規制庁が、九電など電力会社の生死を握る。

 国際原子力機関(IAEA)は今年4月に公表した報告書で、規制委の検査態勢について、より効率的で柔軟に対応するため、検査制度を改善・簡素化すべきだと、政府に求めた。

「会社は赤字体質」

 審査の長期化は、電気料金の値上げという形で、家庭や企業経営に影を落とす。九電も25年に本格値上げに追い込まれた。

 玄海原発3、4号機は出力各118万キロワットと、川内原発1、2号機(各89万キロワット)を上回る。電力の安定供給に欠かせない。

 九電は、玄海原発の稼働を織り込んで、料金原価を算出している。川内原発の再稼働で4年続いた最終赤字からは脱したが、玄海原発が動かない限り、真の経営再建にはつながらない。

 瓜生氏は10月31日の記者会見で「玄海が動いていない以上、会社は赤字の体質だ」と強調した。

 大型原発の2基が動けば、月平均120億円程度の収支改善効果がある。九電は、玄海原発が再稼働することで、ようやく「片翼飛行」から脱する。

 さらに、電力の安定供給や二酸化炭素排出量の抑制など、さまざまな課題解決に寄与する。

 地元経済界も早期再稼働に期待する。佐賀県商工会議所連合会は9月、山口祥義知事に対し、玄海原発再稼働を求める要望書を提出した。

地元同意も焦点

 その佐賀県では「地元同意」に向けた議論が始まった。

 10月には、県内20市町の首長と知事が原発再稼働について意見交換した。伊万里市と神埼市の2市長が再稼働反対を表明したが、最終的には知事の意向を尊重する考えを示した。

 山口氏は9日、記者団に「安全・安心が確認できれば再稼働する方向で考えるべきだ」と述べた。九電や地元経済界には、早期再稼働に向け、山口氏の手腕に期待する声も多い。

 玄海原発が稼働することは、九州の電力事情が東日本大震災前の姿に戻ることを意味する。これ以上の遅れは許されない。(高瀬真由子)