若者のフェイスブック離れは本当か? 日本法人トップが言及「中高年ばかりの論調は…」

 
フェイスブックジャパンの代表取締役・長谷川晋氏=東京都港区(伴龍二撮影)

 世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)会社、フェイスブックの日本法人であるフェイスブックジャパンの長谷川晋代表取締役(39)が産経新聞のインタビューに応じた。日本は世界有数のモバイル先進国で主力の広告事業で著しい伸びを示すなど、アジア太平洋地域の牽引(けんいん)役を担っている。長谷川氏に8つの質問をたずねた。

 (1)世界戦略を進める上での日本法人の位置づけは

 「スマートフォンの普及は著しくとても重要な市場だと認識しており、昨年だけでもクリス・コックスCFO(最高製品責任者)をはじめ、本社の幹部クラスが相次いで日本を訪れた。世界第3位の広告マーケットは魅力的でユーザーや企業に向け、どういったサービスを提供する必要があるのかを学ぶのが主目的だが、他の部分でも大きな影響を受けている。例えば『超いいね』や『悲しいね』といった色々な感情表現のマークは、日本の絵文字に感化されて生まれた」

 (2)日本の市場環境は

 「人々の生活やコミュニケーションのど真ん中に、スマホが入っていることが追い風となっている。月間の利用者数はフェイスブックが2600万人、写真SNSのインスタグラムが1200万人と両方とも順調だ。国内で提供されているSNSの中でも伸び率は突出しており、確かな手応えを感じている。このうちフェイスブックは7割が毎日活用しており、質の高いSNSだと自負している」

 (3)広告事業も好調なようだ。その理由は

 「実名で登録しているためターゲティング精度が高いからだ。例えば『この年代のこういった人に訴求したい』とキャンペーンを展開したとき、ある調査によると精度は95%に達した。一般のウェブサイトに比べて三十数ポイントも上回っている」

 (4)若者のフェイスブック離れを指摘する声が強い

 「『中高年ばかりが利用している』といった論調があるが、われわれが把握しているデータとは大きく異なるというのが、率直な感想だ。スマホの浸透率と関連性が高く、年齢層や男女比率はかなりばらけている」

 (5)利用者をさらに増やしていくための課題は

 「コミュニティーを通じ人同士のつながりを強くすることを、テーマとして掲げている。日々の情報提供だけではなく、その部分を前面に打ち出した戦略を引き続き推進したい。例えば震災時の安否確認やセーフティーチェックといった機能を提供しているが、日本ではそういったニーズが高い。また、自殺を考えていそうな友人がいるようであれば、それを通知してみんなでサポートする仕組みも用意している。フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャー…。フェイスブック“ファミリー”として利用者のニーズにきめ細かく応えていくことが重要だ」

 (6)コミュニケーションをより緊密にするサービスは

 「注目しているのは動画。これまでは写真が基礎となっていたが、これだけスマホが普及すると、1人ひとりが高感度のビデオカメラを所有していることと等しいからだ。春になって目黒川の桜を動画で投稿するというのは、よりリッチなコミュニケーション。こうした行動が主役になりつつある。また、オキュラスというVR(仮想現実)のサービスを提供しているが、VRを活用すれば一緒にいなくても同じ場を体感してコミュニケーションを図れるようになる。このサービスは10年スパンの話だが、テクノロジーとともに人と人とのコミュニケーションの取り方が、進化・多様化していく。それに対応してどういったサービスを強化できるかが利用者向けの課題だ」

 (7)広告をはじめとした法人向け事業の課題は

 「モバイルの普及によってマーケティングモデルは確実に変わっている。顧客とともにその変化を踏まえた取り組みを行うことで『次の成長のベストパートナーになる』といった思いを、改めて強くしている。とくに中小企業にとっては親和性が高いビジネスモデルだと認識している。サービス内容が的確に伝わると思われるフェイスブックの利用者に対し、ピンポイントで直接的に、それもある程度のスケール感をもってアプローチできるからだ。中堅・中小企業やベンチャーへの支援は、大きなビジネスチャンスだ」

 「海外進出サポートにも力を入れる。一昔前なら現地法人を設立して進出先の商習慣に倣うことが必要だったが、パソコンが1台あれば世界中のフェイスブックの利用者の中から取引相手の候補者を見つけ、直接コミュニケーションを交わせる時代になったからだ。例えば世界中のスポーツ好きな人を1億人抜き出してきて、直接的に動画で自社製品を売り込んで、交渉も可能だ。グローバルビジネスのハードルは圧倒的に下がっているのに、そういうことを知らない人がほとんど。情報発信を積極的に行うことで海外進出の活性化につなげていきたい。『起業女子』というプログラムのサポートにも力を入れる。女性1人で起業してもインスタグラムの活用で、ファッション関連などの新しいビジネスが誕生する可能性があるからだ」

 (8)訪日外国人観光客をさらに増やしていくことが国家的な課題だが、フェイスブックはどういった形でサポートするのか

 「世界中の利用者の中から日本に興味がある人をターゲットに、動画や写真を通じて日本のよさを訴求していく。また、外国人観光客の方は日本でフェイスブックを利用し、実際に来日したかどうかまで分かるので、グローバルベースでの情報発信を効率的に進めていきたい。モデルとなるのはマーケティング予算の大半がデジタルに充てられている、ニュージーランド。四季の美しさを世界に発信し、しっかりと外国人観光客を増やし経済効果につながっていることを証明している。日本でもやっていけるはずだ」(聞き手・経済本部 伊藤俊祐)

■長谷川晋氏(はせがわ・しん) 京大経卒。プロクター・アンド・ギャンブルを経て2012年楽天入社。上級執行役員を経て15年10月から現職。兵庫県出身。39歳。

■フェイスブック 米カリフォルニア州に本社を置く、世界最大の交流サイト運営会社。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が2004年2月に創業した。フェイスブックに加え、リアルタイムでメッセージの交換ができるワッツアップメッセンジャー、フェイスブックメッセンジャー、写真に特化したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のインスタグラムという4つのサービスを提供している。2016年10~12月期決算は、売上高が前年同期比51%増の88億900万ドル、最終利益が2.3倍の35億6800万ドル。動画を含むモバイル広告が好調を持続しており、売上高と最終利益とも四半期で過去最高を更新した。