東芝“両刃”の米破産法浮上 WHの損失リスク切り離しへ覚悟
経営再建中の東芝が、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)について、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請を選択肢の一つとして検討することが24日、分かった。7000億円超の巨額損失を出すことになった米原発事業の再建が急務となるなか、幅広い選択肢を検討する。東芝は同日、半導体メモリー事業の分社化も正式決定した。
半導体メモリー事業は3月30日開催の臨時株主総会で分社化の承認を得た後、4月1日に事業を引き継ぐ新会社「東芝メモリ」を発足。社長には東芝の成毛康雄副社長が就く。その後は3月から5月にかけて実施する入札で過半の株式を売却し、1兆円以上の資金調達を目指す。
「半導体は全株売却もあると決断した。あとは(海外の原発事業を担う)WHをどうするかだ」と東芝幹部は語気を強める。
経営再建に向け、最大の課題はバケツに空いた大きな穴をいかにふさぐかだ。巨額損失の元凶となった海外の原発事業を大幅に縮小していく考えで、「5つ程度のシナリオで本格的な議論を始めた」(幹部)という。
すでにリスクの高い建設工事からの撤退やWHへの出資比率を引き下げる再建策を表明した。このほか、既存の受注案件を選別し、採算性などから撤退すべき案件から手を引く策もある。さらにWHへの破産法の適用で一気に再建する案も出ている。慎重な意見もあって幹部間でも意見は割れており、今後、議論を深めていく。
WHの破産法の適用申請を選択肢とするのは、原発事業で今後も損失を垂れ流すリスクを切り離す狙いがある。
米国で巨額損失を計上したのは、2011年の東京電力福島第1原子力発電所の事故を機に世界で安全基準が厳しくなり、工事が遅れているのが理由だ。建設費用の増加分はWHが負担する工事契約を発注元の電力会社と結んでいるため、完成が遅れると、損失が雪だるま式にふくれあがる懸念がある。
米連邦破産法11条は、多額の負債を抱えて経営難に陥った企業が申請し、負債を整理し企業の再建を目指す仕組みだ。仮に、WHが申請して裁判所に受理されれば、「原発建設で今後発生しうる潜在的な債務を切り離すことができる」(銀行関係者)という。
ただ、現実はそう簡単な話ではない。破産法の適用を受けた場合、銀行や取引先に一定の債権放棄を求めることになる。取引の継続ができなくなる恐れがある。
また、東芝は米国の原発建設で、WHに対して約8000億円もの債務保証をしている。WHの法的整理に伴い、受注している原発工事を完了できなくなった場合、発注元の電力会社などに対し違約金を支払う必要があり、半導体事業の売却で1兆円以上の資金を得ることができても吹き飛びかねない。
それでも経営再建のスピードを上げるため、東芝幹部の一部には「覚悟を決めるべきだ」との意見が根強い。膿を出し切ることができるか。再生に向け東芝は重大な決断を迫られている。(万福博之、井田通人)
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