ホンダF1、悲願の表彰台狙う 再参戦3年目レース 24日開幕
ホンダがエンジン供給者として参戦する自動車レースの最高峰「F1」が24日にオーストラリアで開幕する。2015年に7年ぶりに復帰してから2年間は、開発の遅れが響き最高5位と低迷。F1プロジェクト総責任者の長谷川祐介氏は3年目の挑戦でかつての強さを取り戻し、復帰後初の表彰台獲得を目指す。
昨年は6位に浮上
「進化を遂げ、先頭集団に追い付くことが目標だ」。2月24日、イギリスで開いた17年の新型マシン初公開の場で、登壇した長谷川氏はこう力を込めた。
今季にかける思いの強さはこれまでの不振の裏返しだ。15年はエンジントラブルが多発し、全19戦のうちポイント圏の10位内はチーム2台で計6回のみ。チーム順位も9位と、下から2番目に沈んだ。
主因は14年の大幅なルール変更にある。エンジンは従来の排気量2.4リットルから1.6リットルと小型車並みになった。一方で、ブレーキや排気熱のエネルギーから発生する電気で回すモーターの出力は2倍に上げ、最高時速300キロ超で90分以上の走りを可能にしている。
このハイブリッド技術に対し、他チームは14年当初から導入したが、1年遅れで参戦したホンダは「(開発)時間が足りなかった」(長谷川氏)。その結果、エースのアロンソ選手が「(1階級下の)GP2のエンジンだ」と酷評する出力不足に悩んだ。
昨年3月には巻き返しを期し、08年の撤退前にエンジニアを務めた長谷川氏が総責任者に就任。ハイブリッド車(HV)などの開発経験のある長谷川氏の指揮の下、チームは弱点の排気熱のエネルギーを取り出す効率を改善し、16年はチームで年間6位に入った。だが長谷川氏は「F1の技術水準には達したが、まだ性能は不足している」と、上位チームとの差を語る。
技術と人材を磨く
ホンダが悪戦苦闘しながらも、F1に挑戦し続けるのは技術開発や人材育成につなげるためだ。決勝の燃料総量が「100キログラム未満」と厳しい規制が課される中、王者の独メルセデス・ベンツはエンジンの熱効率をディーゼル車並みの40%以上まで上げているとされる。燃費の改善につながる熱効率向上は市販車にとっても大きな課題で、技術の応用が期待できる。
また、人材育成も大きい。ホンダの開発チームは復帰で若返り、30代が中心とみられる。上位チームは年4億ユーロ(約480億円)超といわれる莫大(ばくだい)な予算をかけ、世界で約20戦を戦うF1は「モータースポーツの頂点で、技術やエンジニアが鍛えられる」(長谷川氏)。
ホンダは初参戦からわずか2年目に初優勝を遂げ、自動車事業の躍進のきっかけをつかんだ。今季の戦いを将来の飛躍につなげることができるか。長谷川氏は「表彰台を取らなければいけないという気持ちはある」と前を向いた。(会田聡)
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