ヨドバシから見た「格安SIM」の今 成長に大手サブブランドの壁
ケータイWatch成長に大手サブブランドの壁
家電量販大手のヨドバシカメラの一部店頭で15日、LINEの携帯電話サービス「LINEモバイル」専門コーナーが設置された。LINEモバイルの嘉戸彩乃社長が登場したヨドバシカメラ・マルチメディアAkiba(東京・秋葉原)のイベント後、同社関係者から販売現場の視点でMVNOやSIMロックフリースマートフォンの現状が語られた。
圧倒的に多い新規
LINEモバイルのカウンターは、ヨドバシカメラとビックカメラに設置され、同日から利用できるようになった。ヨドバシカメラ通信サービス商品事業部の松月俊雄事業部長は「店頭コーナーでは、LINEモバイルだけで年間7万~8万件の獲得を目指す」と語る。これは同社で取り扱うMVNO13社の中では3、4番手の規模とのこと。
秋葉原の店舗は、LINEモバイルのサービスやSIMロックフリーのAndroid(アンドロイド)スマホを紹介するコーナーのみ。申し込み手続きなどを行うカウンターは、LINE以外のSIMを含めた“相談カウンター”となる。LINEモバイル専用カウンターは梅田(大阪市)では設置しているが、秋葉原では今後、準備が整い次第の提供になる。
松月氏は、家電量販大手の視点として、MVNOサービスの販売を通じた収益はまだ「厳しい面はある」と黒字化していないことを示唆しつつ、2015~16年はSIMカードの販売が1.5倍、SIMロックフリースマホの販売が2倍と、マイナスをカバーできるまで成長したと語る。
MVNOやSIMロックフリースマホの購入は新規契約での手続きが圧倒的に多く、キャッシュバックなどのキャンペーンが規制された大手3キャリアと比べ1.5倍ほど新規契約が多い。ちなみにMVNOの中でも、mineo(ケイ・オプティコム)は、基本料の無料化といった割引キャンペーンと広告展開のタイミングをマッチさせるのがうまい、と松月氏は評する。実際に、そうした仕掛けを行うときにはmineoの契約数は普段と比べ3割増しになるのだという。
年1度の購入期待
ユーザー層も、これまではITリテラシーが高い層だったが17年度は裾野が広がり、より多くの人が手を出すのではと予想。人気のスマホは今のところASUS、ファーウェイ、FREETELであり、この3社でSIMロックフリースマホの7割を占めるが、16年にモトローラの機種で初めてDSDS(デュアルSIM、デュアルスタンバイ)をサポートすると売れ行きは好調だったとのこと。
ユーザー層が拡大してもなお、今後はより尖った機能をいち早く備える機種の方が人気になるのでは、と見る。例えば、おサイフケータイ、防水といった仕様や、ドコモだけではなくau回線に対応し、なおかつVoLTEも利用できるといったスペックが少なくとも求められるようだ。
端末の売れ筋は、以前は2万~2万5000円といった価格帯が人気だったが、「P9 lite」「ZenFone 3」の登場により単価は5000円ほどアップ。3万円程度という価格は、買い替えサイクルが1年程度だった10年ほど前の携帯電話と同じで、松月氏は「SIMロックフリースマホも1年に1度、購入していただけるのでは」と期待する。
サポート体制拡充
そうした中、MVNOの前に立ちふさがるのがワイモバイル(Y!mobile)、UQモバイルといった大手キャリアのサブブランドだ。
「MVNOの中にはワイモバイル、UQの躍進を想定外だったと語るところもあるようだ」と述べる松月氏によれば、16年10月頃から、機種拡充などでUQ加入者が一気に増えた。16年度上期まではワイモバイルが優勢だったが、16年末~17年春にかけてかなりUQへの支持が増え、今やどっこいどっこい。1~2月は、そうしたサブブランドの方がMVNOよりも1.5倍ほど契約数が多いという。
サブブランドがMVNOよりも人気となる要因の一つとして松月氏はサポート体制を挙げる。仮に端末が故障した場合でも、街中のショップなどサポート拠点があれば、修理の届け出をして、代替機も借りられる。ヨドバシカメラ単体では、修理の受け付けまではできても代替機は手配できない。そこで17年度は、店内にMVNOユーザー向けのサポート専用コーナーを設置する方針。複数のMVNOとともに運営していく考え。
さらに17年4~5月にも、総務省の意向によりMVNOも実効速度を公表する方針で、松月氏はそれをきっかけにして「淘汰(とうた)が進むのでは」と予測した。(インプレスウオッチ)
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