LIXIL、自宅不在でも宅配便受け取り
ベンチャー支援の現場からライナフのスマートロック技術活用
LIXILはベンチャー企業の事業創造を支援するため、昨年から今年にかけてアクセラレーター・プログラムを実施した。その中で、アライアンス賞に輝いたのがライナフ(東京都千代田区)だ。
同社は、スマートフォンを使って鍵を開閉できるスマートロックを「NinjaLock」として展開しており、これまでに数千台の納入実績がある。5月からは新製品の「NinjaLock2」を販売。時計を内蔵することで、例えば「アルバイトが出勤する午後7時になったら扉が開く」といった機能を付加し、主に店舗での導入促進を目指していく。
一方、LIXILはドア市場で圧倒的な強さを誇る。このためライナフが得意とするIoT(モノのインターネット)技術を活用し、自宅に誰もいないときも宅配サービスを受けられるシステムの開発に乗り出した。
具体的には玄関ドアと居間の間にもう1枚の頑丈な扉を設置。その間にできたスペースに「土間的な空間」をこしらえ、配送業者が自由に出入りして品物を置けるようにする仕組みとした。大手デベロッパーと共同で、サービスを取り入れたコンセプトマンションの開発も検討しており、早期実用化を目指す。
「土間」には冷蔵庫や棚、ハンガーラックなどが設置されているため、居住者がいない場合でも宅配弁当やクリーニング済みの衣類を届けることができ、再配達はなくなる。
玄関扉には数字キーが取り付けられており、配送者には1回限りのパスワードを発行。防犯対策の一環として、誰がいつ届けたのかを把握できるようにする。また、住居内のもう1枚の扉にはクラウドカメラを備え付け、玄関の鍵を開けた時点から録画を開始する。
単身や共働きの世帯が増え、宅配サービスに対するニーズは高まっている。しかし、「現在のサービスは、主婦が家にいることが前提にあるような感じがする」(ライナフの滝沢潔社長)というように、利用しにくいものが少なくない。また、家事代行サービスを不在時に依頼する際、鍵をポストなどに入れておくことはよくあるが、リスク対策は決して十分でない。
新システムはこうした問題の改善に寄与する役割を果たす。また、再配達するケースが激減するため、宅配ドライバーの長時間労働の緩和にもつながることになる。
今回の取り組みについては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も着目。研究開発型ベンチャーとしてライナフが採択され、最大7000万円の助成金が交付されることが決定している。
「ベンチャー支援の現場から」は、中小・ベンチャー企業を支える企業や金融機関などによる支援の具体策や事例などを紹介していく。
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