三菱自燃費不正から1年 信頼回復「施策具体化」カギ 日産流に自信

 
燃費不正問題を受けた社内改革についての記者会見の冒頭で頭を下げる山下光彦副社長=13日、東京都港区

 三菱自動車の燃費不正問題の公表から20日で1年が経過する。昨年10月に資本業務提携した日産自動車の傘下で再発防止策を徹底するが、社員に意識改革を浸透させるには時間がかかるのも事実。過去の2度のリコール隠し問題と燃費不正問題で失墜したブランドの回復には、再発防止は当然として、魅力的な商品の提供による販売増で結果を示す以外に方法はなく、改革の本気度が試されている。

 「方策の具体化が(社内改革の)鍵になる」

 昨年6月に日産から派遣された三菱自の山下光彦副社長は13日、東京都内の記者会見で改革の絶対条件をこう強調した上で、現在の取り組み状況を説明した。

 法令と異なる走行試験を繰り返していた問題をなくすため、走行試験のデータを自動で計測できるシステムを自動車業界で初めて導入。データ改竄(かいざん)など問題の温床となった複層的な開発部門をスリム化し、山下副社長の直轄に本部長がぶらさがる方式に改めた。“たこつぼ”的だった部門の閉鎖性の解消に向け、商品戦略や開発、デザインなどの横断的な会議体も設けた。

 社員の意識改革に向けた教育も強化。新入社員からの研修の徹底や、不正事案を具体例とした教育プログラムをつくり、開発部門の全員に研修を受けさせる。

 施策が具体的に機能しているかをチェックする態勢も整えた。ただ、三菱自は過去のリコール隠し問題の際にも、その都度、再発防止策を策定したが、不祥事は繰り返された。山下副社長は過去の施策について「空回りしていた」と厳しい見方を示す一方、現在の取り組みは「制度が具体化して動き出すと、何年かすると社員の意識が全然違うという方向になる」と日産流の改革に自信を示した。

 日産と三菱自の会長とルノーの社長を務めるカルロス・ゴーン氏は、三菱自に対し、信頼回復を何より優先して求めている。三菱自の販売が戻れば3社連合の販売台数は今の996万台から上積みされ、ゴーン氏が目指す世界トップの野望の実現が近づくためだが、信頼回復が思うように進まなければ、野望は遠のく。

 ■三菱自動車の燃費データ不正問題の経緯

 2016年4月20日 軽自動車4車種62万5000台で燃費データを改竄する不正があったと発表

        26日 1991年から法令と異なる走行法や机上計算で燃費を計測していたと発表

       5月2日 国土交通省が独自の燃費試験を開始

        12日 日産自動車と資本業務提携で基本合意

        18日 「パジェロ」など5車種で机上計算していたと発表

        25日 軽4車種の補償費用などで16年3月期に特別損失191億円を計上

      6月15日 販売終了車種でも机上計算や改竄があったことが判明

        23日 不正対象車に1台当たり10万円の補償を発表

        24日 株主総会で相川哲郎社長が辞任し、益子修会長が社長を兼務

       7月4日 軽自動車の生産・販売を再開

        27日 16年4~6月期連結決算で最終損益が1297億円の赤字になったと発表

       8月2日 特別調査委員会の報告書を公表

        30日 国交省が販売中の8車種で燃費値がカタログよりも悪化したと発表

     10月20日 日産による34%の出資完了。益子氏が社長に留任し、日産のカルロス・ゴーン氏が会長に

     12月14日 臨時株主総会と臨時取締役会を開き新経営体制を発足

 2017年1月31日 17年3月期の連結営業利益予想を当初の276億円の赤字から10億円の黒字に上方修正

      4月20日 燃費不正問題から1年