トリンプ「天使のブラ」 今夏は異例のブランド戦略 「なぜ『天使』でやるの?」
開発物語■“最涼”か“着やせ” 選べる夏に
≪STORY≫
トリンプ・インターナショナル・ジャパンが、長寿ブランド「天使のブラ」の春夏向けの新製品「スーパーCOOL(クール)」と「スリムライン」を発表した。1つのシーズンで1製品を展開するのがブランド戦略の定番だが、今季は2製品を投入する異例の体制を敷いた。暑い夏をより快適に楽しむため、「最涼」と「着やせ」という選択肢を提案する。
天使のブラは、同社のブラジャーの中でも構成パーツが多く、その数は60以上にもなる。1994年の初代発売以来、着用時の胸のシルエットを生み出す基本パターン(型紙)は変えずに、素材やレースのデザインを変えることで、機能性やデザイン性を時代のニーズに合わせてきた。
「一番涼しく感じられる天使のブラが必要だ。夏だから着けやすい、楽に着けられる(機能)も必要だ」
2015年秋。市場調査で女性のニーズを発掘し、コンセプトを考えるマーケティング担当から、商品企画開発チームに17年春夏向けのテーマが伝えられた。
開発担当となった毛利美由紀さんは「トリンプには、『フリーブラ』というメッシュ素材で軽くて涼しい製品が(すでに)ある。なぜ『天使』でやるのかと思った」と言う。だが、自身のフリーブラ着用時のシルエットに「もう少し立体感があればいいな…」と感じたこともある。天使のブラで挑戦しようと考えを変えた。
胸を覆うカップ素材はすぐに決まった。フリーブラに使っている通気性の高いメッシュ生地だ。他の肌に触れる部分は接触冷感素材を選んだ。マーケティング担当からあったもう一つの課題、着けやすさについては、背中のフックを止める際にブラジャーの胸の中心から脇、背中(背部)にかけて、通常なら伸縮性のないアンダーバスト部分が伸びることで解決すると発想した。
しばらくして、1回目の試作品がトリンプ香港本社にあるサンプル室から届いた。確認すると、メッシュ生地は柔らか過ぎてカップの形を保つことができず、乳房の重みで生地が伸びてしまう。天使のブラに必要な「胸の高さ」が作れず、胸が潰れる。アンダーバスト部分をすべて伸びるようにしたことでカップは左右に引っ張られ、胸の形を崩してもいた。
メッシュ素材を生かすため、毛利さんが着目したのは乳房を支えるワイヤ形状だった。U字形のワイヤ両端の幅が広い方がいろんな体型の人に合うブラジャーに仕上がるが、試作では胸の形が潰れてしまった。両端の幅を狭くすれば胸の形を保てるが、すべての体型に合わせることが難しくなる。複数の候補の中から、試作に使ったワイヤと比べて少し狭めで、脇側が直線的なワイヤを採用した。
試作を続ける中、新規にパターン(型紙)を起こすことも決断した。「基本パターンの改良だけでは足りない。メッシュ素材を生かそうとすれば、基本パターンの持つ“前に突き出すような胸の高さ”は出ない。そこで、バストトップを高くなるようなパターンを引いてもらった」(毛利さん)。カップ生地の伸び止めに、外側のレースとメッシュ生地の間に薄布をかませた。16年5月、7回目の試作で製品の基本スタイルができあがった。パーツ点数が30弱にまで減った新たな天使のブラは従来品に比べて軽く、カップの通気性は3.5倍になっていた。
同時並行でスリムラインの開発を担当したのが、野口恵さんだ。カップの脇に近い部分にポリエステル素材の板を入れて乳房の脇流れを面で抑える機構を施し、胸の高さを出して脇をすっきり見せる。07年の発表以降の定番製品だ。こちらの17年春夏向け製品のテーマも「スリムでも涼しく」だった。
定着している分、着用時のスタイルを変えたら「スリムじゃない」と言われかねない。接触涼感素材を採用するだけでは、これまでと大して変わらない。
野口さんのスリムラインに対する印象は「カップやアンダーバストにレースを使い、胸の中心は飾りが付き、さらに脇にも刺繍(ししゅう)入りレース。色とりどりの丸くてかわいらしい小花があしらわれて華やか」というもの。そこに涼しさを加えるには、どうすればいいか-。
夏場は薄着になるため、ブラジャーが透けることを気にする女性は多い。透けにくさを加えることで、独自性を持たせることができる。野口さんがたどり着いた結論は接触涼感素材を使い、基本パターンは変えず、「スリム史上、一番シンプルな見た目」だった。
装飾のレースはすっきりした印象となるようにして、胸の中心の飾りは付けず、色使いは2色。「他のブラジャーと比べ、スリムラインはスタイル保持のため背部やカップなどに使う布の量が多く、見た目に重さが出る。見た目に軽さを持たせることで店頭でも選ばれやすくなる」。マーケティングへ説明すると、「今までとは違うが、夏には合う」と了承された。
秋冬向けや、前年の春夏向けの商品と印象が重ならないよう、毛利さんと野口さんは色合いやレース生地を話し合って選ぶなど、二人三脚で完成させた。
≪KEY WORD≫
■天使のブラ
トリンプ・インターナショナル・ジャパンが1994年春夏向けに発売して以来、同社の看板ブランドとなったブラジャーで、2017年6月現在の累計販売総数1900万枚。胸を美しくきれいに見せるスタイリング機能と、着心地の良さや快適さを兼ね備える。ターゲット層は30代だが、20~60代と幅広い支持を獲得している。17年春夏向けでは、定番の「スリムライン」と従来製品比3.5倍の通気性を確保した「スーパーCOOL(クール)」を投入した。小売り希望価格はいずれも6588~7236円。
▼トリンプ「天使のブラ」(2) へ続く
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