東芝、メモリ売却先決定先送り 交渉さらに長期化
東芝は31日午前、取締役会を開いた。半導体子会社「東芝メモリ」について、8月中の売却先を決定を目指し、同日の取締役会で、米ウエスタン・デジタル(WD)陣営に選定するとみられていた。だが、詳細を詰め切れていないことに加え、当初の優先交渉先の「日米韓連合」から新提案が出され、これを精査する必要も出てきたことから、売却交渉はさらに長期化する。
東芝は31日に開催した取締役会について、「開示すべき決定事項はなかった」と発表した。
東芝メモリの売却先については、主要取引銀行が、8月末までに決定することを東芝に求めていた。これを受け、東芝とWDはトップ会談を行い、WD陣営を売却先にすることで、大筋合意に達した。
だが、将来的な経営主導権をめぐって、WDが出資比率を引き上げる時期などで、意見が対立し、交渉、調整を続けてきた。
取締役会では、綱川智社長がWDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)との交渉内容を説明。訴訟合戦の影響で東芝メモリ内にはWDに対する警戒感が強く、懸念をどう払拭するかを協議したもようだが、WDとの溝を埋めるのは容易ではない状況になっている。
一方、日米韓連合に参加する米投資ファンドのベインキャピタルが新たな買収案を示してきた。ベイン、官民ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行、韓国半導体大手のSKハイニックスという主要メンバーに、新たな目玉として米IT大手のアップルも加え、買収額を2兆円規模にしているとみられる。
ただ、この日米韓連合への売却を決めた場合、WDが起こした訴訟をどう解決するかなど課題も多く、流動的だ。
東芝社内では、訴訟合戦になっているWDが「将来の出資を引き上げられるなどと、契約書にわなを仕掛けているのではないか」(東芝メモリ関係者)との不信感も強く、契約書の作成が難航していた。
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