東芝メモリ売却、決断迫る 日米韓連合、WD案への対抗スキームに

 

 米ベインキャピタルなど「日米韓連合」の最終案は、米ウエスタン・デジタル(WD)が加わる「日米連合」への対抗策になる可能性がある。WDとの係争が続いていても売却を完了できる仕組みで、さらに総額2兆4000億円という破格の条件だからだ。

 「日米韓連合ともう一度きちんと協議してください」。関係者によると、8日にかけ、交渉に影響力を持つ経済産業省から東芝にこう伝えられたという。

 東芝は7日夜の協議で日米連合への売却を固めるつもりだった。だが、なおWDとの溝は埋まらない。見かねた経産省も日米韓連合の最終案の検討を認めざるを得なかった。

 経産省、主力取引銀行とも東芝メモリの早期決着へ、WD陣営との交渉妥結を急ぐべきだとの見解で一致している。WDによる国際仲裁裁判所への提訴が障壁になり、WDと和解しない限り交渉が前進しないからだ。

 だが、詰めの交渉でWDが強気姿勢を崩さず、壁にぶち当たっている。WDは将来の経営権取得を諦めていないほか、東芝に対して買収時に議決権を得ない形で資金拠出を増やすよう求めているもよう。さらに、協業する三重県四日市市の工場で生産する半導体メモリーの割り当て拡大や研究開発投資の負担軽減など権益拡大を要求する。

 東芝メモリの独立経営を目指す東芝にとって、この要求は丸のみし難い。そうした中、日米韓連合の新提案はWDの案に対抗できるスキームになり得る。

 ただ、東芝がこの案を検討するには一定の時間が必要だ。一方、東芝は来年3月末までに売却し、債務超過を解消しないと上場廃止になる。独占禁止法の審査は最低半年はかかるため、時間はもうほとんどない。追い詰められた東芝はどう決断を下すのか。(万福博之)